キース・ヘリングの「幻の壁画」付き高級ロフトが約40億円で売り出し中。壁画だけで建物以上の価値?

キース・ヘリングの壁画が残るニューヨークの3層メゾネットが、2500万ドル(約39億5900万円)で売りに出されている。壁画は長年にわたり壁板の裏に隠されていたが、2007年の改装工事で再発見された。

約39億5900万円で売りに出されているニューヨークのロフト。室内にはキース・ヘリングの壁画が描かれている。Photo: Courtesy of Trove Partners at Compass.
約39億5900万円で売りに出されているニューヨークのロフト。室内にはキース・ヘリングの壁画が描かれている。Photo: Courtesy of Trove Partners at Compass.

ニューヨークの不動産市場では、専用ジムや屋上プールなど、魅力的な付帯設備が物件の価値を大きく押し上げることがある。では、そこにキース・ヘリングの壁画までついていたらどうだろうか。現在、そんな物件が2500万ドル(約39億5900万円)で売りに出されている。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、この物件は7つの寝室を備えたロフトで、ヘリングが1979年に制作した壁画が室内の壁や天井、支柱に直接描かれている。つまり、アートが物件に付属している(あるいは物件がアートに付属している)と言っても過言ではない。

広さおよそ740平方メートルにおよぶこの3層メゾネットは、1896年に完成したネオルネッサンス建築、アメリカン・スレッド・ビルディングの一室だ。ヘリングの作品に加え、9つのバスルームや試写室、ジム、サウナが備え付けられており、天井高は約8.5メートルに及ぶ。

この壁画は、スクール・オブ・ビジュアル・アーツ在学中のヘリングによって制作された。同校は当時、この建物の一部を学生向けの展示スペースとして使用していた。靴墨とアルコールを混ぜて描かれたこの作品には、のちにヘリングの代名詞となるグラフィティのような人や物の形が描かれている。

しかし、スクール・オブ・ビジュアル・アーツが撤退した後、このスペースはレストランに改装され、壁画は壁板の裏に隠されてしまった。それから数十年にわたり人目に触れることはなく、再びその存在が明らかになったのは2007年のことだった。

壁画を発見したのは、当時の改装に携わっていたニューヨークの建築家、トッド・エルンストだ。エルンストはニューヨーク・マガジンの取材に対し、発見時の驚きを「古代エジプトの墓を発見したかのよう」と語っている。水溶性の塗料で描かれたこの作品は、スプリンクラーの配管のすぐ近くにあったにもかかわらず、奇跡的に無傷で残っていた。

この物件はその後、人材採用企業を率いるアダム・ゾイアの手に渡り、2年がかりで改装工事が行われた。改装に際しては、不測の事態から壁画を保護するため、その前にバーカウンターを設置している。ゾイアはニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに対し「署名のない壁画をひと目見て、ヘリングの作品だと確信しました」と語った。また、作品の真正性はキース・ヘリング財団によって証明されているという。

この壁画は、鉄の柱や梁、天井、そして周囲の壁面へと広がっている。こうした建物と一体化した作品の価値について、ニューヨークのギャラリストであるジェン・シンガーは、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、「サイトスペシフィックな性質をもっているため、物件と切り離して価値を評価することは不可能に近い」と語っている。通常の絵画とは異なり、壁画だけを取り外して売却することが難しいからだ。一方、ゾイアは作品の潜在的な価値について強気な姿勢を見せ、「もし作品を取り外すことができたなら、おそらく物件そのものよりも価値があるでしょう」と同紙に語っている。

現時点でこの物件は、トローヴ・パートナーズを通じて売りに出されている。(翻訳:編集部)

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