ヴェネチア・ビエンナーレ米国館が深刻な資金難。展示作品の撤収・返送費を確保できず

第61回ヴェネチア・ビエンナーレのアメリカ館で、展示の撤収や作品の返送に必要な資金が不足していることが明らかになった。運営団体が確保した資金は予算の6割程度にとどまり、約30点の巨大彫刻をアメリカへ持ち帰る目処が立っていない。

アメリカ館の外観。Photo: Maximilíano Durón/ARTnews
アメリカ館の外観。Photo: Maximilíano Durón/ARTnews

従来とは異なる選考過程を経て、第61回ヴェネチア・ビエンナーレのアメリカ館代表作家に選ばれたアルマ・アレン。数カ月にわたる混乱の末、約30点の巨大な彫刻作品をヴェネチアに運び込むことには成功したものの、今度はそれらを撤収し、アメリカへ持ち帰るための費用を確保できない状況にある。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、アメリカ館の運営を担う非営利団体「アメリカン・アーツ・コンサーバンシー」は、約100万ドル(約1億5800万円)の資金不足に陥っているという。アメリカ館のコミッショナーを務めるジェニ・パリドは、同紙が入手した書簡に次のように記している。

「作品の撤収とアメリカへの返送をめぐり、差し迫った資金難に直面しています。短期間で大きな成果を挙げましたが、最終段階で財政上の課題が立ちはだかっており、その解決に向けて奔走しています」

同団体が確保できた資金は、250万ドル弱(約3億9450万円)の予算に対し、140万ドル(約2億2100万円)にとどまっている。このため、石や金属で作られた巨大な彫刻群を一時的に保管する費用や、アメリカへの輸送費を工面できない状況に陥っている。ビエンナーレは11月22日に閉幕する予定だが、ヴェネチア近郊には作品の保管場所が確保されておらず、アメリカ館にも収蔵庫はない。さらに、同館を所有するグッゲンハイム財団にも作品を受け入れる余力はないという。

アメリカ館の運営をめぐっては、パリドの起用当初から議論が巻き起こっていた。フロリダで高級ペットフードやライフスタイル雑貨を扱う事業を営んでいた彼女は、米国務省の「アート・イン・エンバシー」を統括するエリン・スカヴィノの推薦を受けて、同館の統括責任者に就任している。なお、これまでアメリカ館の代表作家は、実績ある文化機関からの企画提案を独立審査委員会が審査する方式で選ばれていたが、トランプ政権はこの選考プロセスを撤廃した。

複数のアーティストが代表作家への就任を断ったと報じられるなか、最終的に白羽の矢が立ったのが、メキシコを拠点に活動するアレンだった。しかし、アレンはニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、展示が始まるまでパリドもアメリカ館のキュレーターを務めたジェフリー・ウスリップも、作品を見るために自身のスタジオを一度も訪れなかったと語っている。さらに、ビエンナーレのプレビュー期間が終わる頃には、アレンとウスリップの関係が悪化し、会話を交わすこともなくなっていた。

また、アレンは展示に関する資金調達の実情や、今回の資金不足について一切知らされていなかったという。自身が主催者側に請求した経費も、ヴェネチアへの旅費と比較的安価な民泊施設の宿泊費程度で、いずれも後から払い戻されたと語っている。

主催者側は当初、今回の展示が歴代のアメリカ館のなかでも、比較的少ない予算で実現したものであることを強調していた。実際、2024年のアメリカ館の予算は約500万ドル(現在の為替レートで約7億9000万円)、2022年には約700万ドル(同約11億円)にのぼっている。

国務省はアメリカ館に37万5000ドル(約5920万円)の助成金を拠出したが、残りの大部分は民間からの寄付で賄う計画だった。パリドは資金調達のため、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチの会期中に開催されたパーティーや、ドナルド・トランプ大統領の別荘であるマー・ア・ラゴでのディナーにも出席していた。国務省はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、民間からの資金調達には関与していないと説明している。

資金不足が解消されなかった場合、作品がどうなるのかは明らかになっていない。ニューヨーク・タイムズ紙は、撤収や輸送に必要な費用を確保できなかった場合の対応について、アメリカン・アーツ・コンサーバンシーにコメントを求めたが、返答は得られていない。

2017年に開催された第57回ヴェネチア・ビエンナーレのアメリカ館を企画したケイティ・シーゲルはこうした状況について「正気の沙汰ではありません」と語っている。(翻訳:編集部)

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