西部劇風「指名手配ポスター」が奏功。住民が競売で発見、戦時中に略奪された17世紀の絵画が返還へ

フランスのオルレアン美術館が、第二次世界大戦中に略奪された美術品の捜索活動を通じて、17世紀の絵画を発見した。西部劇を思わせる「指名手配ポスター」が地元住民の協力につながり、現在は返還手続きが進められている。

ウィレム・コルネリスゾーン・ダイスター《Un Buveur》(1630頃) Photo: Courtesy Musées d’Orléans

フランスのオルレアン美術館が、第二次世界大戦中に略奪された数百点の美術品を探すため、「WANTED(指名手配)」と題した捜索活動を進めている。この取り組みによって新たに1点の絵画が発見されたことを、同館の館長がUS版ARTnewsに明らかにした。

今回見つかったのは、オランダの画家ウィレム・コルネリスゾーン・ダイスターによる17世紀の絵画《Un Buveur(飲酒者)》だ。この作品は1940年に同館から盗み出されたが、10月にスイスのオークションハウスで発見され、現在は美術館への返還手続きが進められていると、フランスの美術専門誌『Le Journal de l’Art』が報じていた。

1940年6月、ナチス・ドイツの攻撃を受けた際、オルレアン美術館の別館であるポール・フルシェ美術館から約350点の美術品が略奪された。当時、枢軸国と連合国の双方が戦争の混乱に乗じて、各地の美術館から作品を持ち去ったとみられている。オルレアン美術館の館長オリヴィア・ヴォワサンによると、ユーモアを交えて盗難の事実を広く知らせたことが、今回の発見につながったという。

捜索に使われているポスターには、同館から失われた美術品の白黒画像とともに、アメリカの西部劇を思わせる太い書体で「WANTED」の文字が大きく記されている。これらのポスターは、SNSや美術館の公式サイト、ニュースサイトなどで公開されており、2年前に作成された盗難作品のデジタルカタログも捜索に活用されている。

ポスターの公開をきっかけに、オルレアンの住民も行方不明の作品を探し始めたという。ヴォワサンは「地元の方が私たちの捜索に協力してくれました。こうした取り組みを美術館だけでなく、多くの人々とともに進めることが今回の目的でした」と語る。

地元住民がオンラインオークションを確認していたところ、スイス・ルツェルンに拠点を置くオークションハウス、グロッグナーが10月17日に開催予定だった競売に、《Un Buveur》が出品されているのを発見した。予想落札価格は約3400ドル(約54万円)で、当初は習作と考えられていた。絵には、17世紀の服装に身を包んだ男性が椅子に腰掛け、空のグラスを片手に差し出しながら、もう一方の腕を上げて楽しげに語りかける様子が描かれている。

美術館は情報提供を受けてオークションハウスに連絡した。ヴォワサンによると、同社はすぐに協力に応じ、終始透明性のある対応を取ったという。彼女は、こうした問題に対するオークションハウスの姿勢が以前とは変わってきているとも指摘する。その後、ヴォワサンは美術館に残されていた作品画像と、出品作品のデジタル画像を重ね合わせたものを所有者に提示した。両者が完全に一致することを確認した所有者は、無償での返還にすぐに同意したという。この絵画は、所有者が1990年代にロンドンのオークションハウスで購入したものだった。現在はフランス国境の税関で保管されており、美術館への返還手続きが進められている。ヴォワサンはUS版ARTnewsに次のように語っている。

「所有者はすぐに絵画の返還を申し出てくれました。35年間にわたって作品を楽しむことができたので、そろそろ本来の場所に戻すべき時だと考えたそうです。彼にとって、返還はごく自然な決断だったのでしょう」

この絵画はダイスターの代表作のひとつとされる。同館から略奪された作品のなかには、本作と同じく17世紀のオランダで描かれた、酒宴などの賑やかな場面を題材とする絵画が複数含まれていた。一方、本作には何度も加筆や洗浄が施された形跡があり、こうした処置によって損傷したとみられる。ヴォワサンによると、保存状態が良好であれば、作品の評価額は2万5000〜3万ユーロ(約440万〜530万円)に上るという。

オルレアン美術館は長年にわたり、第二次世界大戦中に失われた美術品の回収に取り組んできたが、目立った成果は得られていなかった。現在も、戦時中の略奪品に限らず、盗難や紛失によって計424点の絵画が行方不明となっている。そのなかには、エドゥアール・マネ、ハンス・ホルバイン(子)、アンソニー・ヴァン・ダイク、ロレンツォ・コスタの作品や、ラファエロの工房が制作したとされる作品も含まれる。しかし、デジタルカタログの作成や「WANTED」と題した捜索活動によって、ここ数年で《Un Buveur》を含む計4点の絵画の所在が明らかになった。(翻訳:編集部)

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