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  • 2022.04.04

マグリットが8000万ドル、マルクが5700万ドルなど最高値更新作家が続々~3月のオークション記事まとめ

ARTnewsが3月に報じたオークション情報をまとめてお届けする。4月にパリのサザビーズでは、イブ・クラインの珍しいアートが初オークションに掛けられる。5月にクリスティーズは、慈善家の故アン・バスの自宅を飾っていたロスコ、モネ、ドガなどのコレクションを売りに出す。カノーヴァ作マグダラのマリアは、7月にクリスティーズに登場予定だ。3月のオークション実績は、各社とも好調だった。売却価格は、ルネ・マグリットの「光の帝国」が7980万ドル、略奪美術品として注目されたフランツ・マルクが5700万ドル、フランシス・ベーコンの三連祭壇画が4760万ドル、クロード・モネの睡蓮(すいれん)シリーズの一つが3120万ドル、ピカソのマリー・テレーズ・ウォルターの肖像画が2130万ドル、デイヴィッド・ホックニーの2017年作品が1890万ドルなど。作家のオークション記録の更新も目立った。

Yves Klein, Zone de sensibilité picturale immatérielle, 1959. COURTESY SOTHEBY'SYves Klein, Zone de sensibilité picturale immatérielle, 1959. COURTESY SOTHEBY'S

イブ・クラインの作品「領収書」が4月にパリで初競売に

何もない空間の断片を売るというイブ・クラインの1959年のパフォーマンス。その一部としてコレクターに発行した領収書のうち、現存する最後の1枚が4月6日、パリのサザビーズで初めて売りに出される。この領収書《Zone de sensibilité picturale immatérielle(非物質的絵画的感性の地帯)》は、見えないアート作品についてのもので、パフォーマンスの一環として制作された。落札予想価格は30万~50万ユーロ(33万1000~55万2000ドル)。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年3月22日に掲載されました。元記事はこちら

Anne Bass New York apartment living room. COURTESY CHRISTIE'SAnne Bass New York apartment living room. COURTESY CHRISTIE'S

総額予想2億5000万ドルのロスコ、モネ、ドガら、クリスティーズに5月登場

テキサスの石油王の元妻で慈善家の故アン・バスのコレクションが5月、クリスティーズ・ニューヨークで販売される。エドガー・ドガ、クロード・モネ、マーク・ロスコら、印象派と現代アートの計12点で総額2億5000万ドルになると予想されている。NYの自宅リビングに飾っていたロスコの作品2点の予想落札価格は、《無題(Shades of Red)》が6000万~8000万ドル、オレンジ色とピンク色の抽象画《No. 1》が4500万~6500万ドル。また、モネの3点セットはそれぞれ3000万~6000万ドル、ドガの若い踊り子の彫像は2000万~3000万ドルと見積もられている。

2020年に78歳で死去したバスは、石油で財を成した後ディズニーの主要株主になったシド・リチャードソン・バスの元妻。1990~94年に毎年、ARTnewsのトップコレクターリスト「コレクター200」に名を連ねていた。出品されるバス・コレクションはオークションに先立って、ロンドンと香港のクリスティーズを巡回する。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年3月31日に掲載されました。元記事はこちら

A Roman Tinned Copper Cavalry Parade Helmet, circa late 2nd-first half of 3rd century A.D. COURTESY CHRISTOS TSIROGIANNISA Roman Tinned Copper Cavalry Parade Helmet, circa late 2nd-first half of 3rd century A.D. COURTESY CHRISTOS TSIROGIANNIS

違法取引の来歴疑いで古美術品の一部が出品取り止め

4月12日にクリスティーズ・ニューヨークで開催予定の骨董(こっとう)品オークションに出品予定だった2点の古美術について、専門家が略奪美術品の疑いを指摘した。紀元前450年のギリシャの花瓶と、紀元2世紀後半から3世紀前半のローマの銅製の兜(かぶと)で、前者は出品が取り下げられたが、後者は予定通り競売にかけられるという。疑義を訴えたのはデンマークのオーフス大学の考古学者クリストス・ツィロギアニス氏だ。違法な古物売買を研究してきた法医学考古学者である氏によると、花瓶と兜はそれぞれ、違法な取引で有罪判決を受けた古物商に関連があるという。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年3月28日に掲載されました。元記事はこちら

Antonio Canova, Mary Magdalene, 1819-22. CHRISTIE'SAntonio Canova, Mary Magdalene, 1819-22. CHRISTIE'S

カノーヴァ作マグダラのマリア、7月にクリスティーズに登場、売却予想は1050万ドル

イタリアの巨匠アントニオ・カノーヴァ作であることが昨年分かった、19世紀の大理石のマグダラのマリア像が7月7日、クリスティーズ・ロンドンで販売される。落札予想価格は500万~800万ポンド(650万~1050万ドル)。匿名の売り手は英国在住で、2002年にサセックスのオークションで5200ポンド(7540ドル)で購入したという。カノーヴァの過去最高落札額は、17年にクリスティーズ・パリで記録した510万ドルだが、今回はその記録を塗り替えると期待されている。作品は、4月から5月にかけてニューヨークと香港を巡回する。

※この記事は、米国版ARTnewsに22年3月17日に掲載されました。元記事はこちら

Franz Marc, The Foxes, in a viewing room at Christie's 20/21 Shanghai to London sale preview, New York, NY, February 4, 2022. ANTHONY BEHAR/SIPA USAFranz Marc, The Foxes, in a viewing room at Christie's 20/21 Shanghai to London sale preview, New York, NY, February 4, 2022. ANTHONY BEHAR/SIPA USA

マルク、ベーコン、ピカソらで計3億3400万ドルを売り上げ、クリスティーズの2都市開催セール

クリスティーズは3月1日、ロンドンと上海の2都市開催オークションで、20~21世紀の作品で計3億3400万ドルを売り上げた(保険料込み)。この日のトップセールスは4270万ポンド (5700万ドル)で、返還芸術品として注目されていた、1913年のフランツ・マルクの絵画《DieFüchse(狐たち)》が記録した。ドイツの美術館から2021年1月に、元の所有者であるユダヤ人銀行家の相続人に返還された後に、売りに出されていた。

1986~87年に制作されたフランシス・ベーコンによる巨大な無題の三連の祭壇画は、最終価格3940万ポンド(4760万ドル)で落札された。もう一つの目玉、ルシアン・フロイドの《目を閉じた少女》(1986-87年)は、1300万ポンド(1730万ドル)で落札された(最終価格は1520万ポンド<2020万ドル>)。いずれも落札予想額の範囲内に収まった。

パブロ・ピカソがキュビスムの手法で描いたマリー・テレーズ・ウォルターの肖像画《Lafenêtreouverte》(1929年)は、落札予想1400万ドルのところを、1600万ポンド (2130万ドル)で売却された。半世紀にわたって個人蔵だったもので、当夜のセールの最後を飾った。

クリスティーズ上海での最高額は、ジャン=ミシェル・バスキアの1982年の絵画《Il Duce》で、9400万人民元(1490万ドル)だった。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年3月1日に掲載されました。元記事はこちら

René Magritte, L’empire des lumières, 1961.René Magritte, L’empire des lumières, 1961.

マグリット、約8000万ドルで売却、サザビーズで

サザビーズ・ロンドンのセールで3月2日、ルネ・マグリットの《L'empire deslumières》 (光の帝国、1961年)が5940万ポンド(7980万ドル)で売られた。マグリットの以前のオークション記録2680万ドルの約3倍で、記録を大幅に塗り替えた。

この絵は、フランスの男爵夫人、アン・マリー・クロウエ・ジロンの所蔵品だった。彼女は、マグリットのパトロンの一人だった弁護士の娘で、16歳でマグリットに出会った後、いくつかの作品でモデルを務めた。ブリュッセルのマグリット美術館に、2009年から貸し出されている。

※この記事は、米国版ARTnewsに22年3月2日に掲載されました。元記事はこちら

David Hockney, Garrowby Hill, 2017. SOTHEBY'SDavid Hockney, Garrowby Hill, 2017. SOTHEBY'S

モネが約3100万ドル、ホックニーが約1900万ドルで売却、サザビーズ・ロンドン

サザビーズは3月2日、ロンドンのオークションで総額2億2140万ポンド(2億9720万ドル、保険料込み)を売り上げた。最高額となったルネ・マグリットの「光の帝国」のほか、クロード・モネの睡蓮のシリーズの一つ《Nymphéas》 (1914年)は、最終価格2320万ポンド(3120万ドル)だった。最も白熱したのが、デビッド・ホックニーの《Garrowby Hill》 (2017年)。最終価格は1400万ポンド(1890万ドル)と、見積もりの750万ポンド(1020万ドル)の約​​2倍で落札された。

この少し前に、ウクライナ戦争への制裁で、ロシアの銀行に取引制限が課せられ、東欧地域の景気低迷と西欧の石油価格の上昇が報道されていたものの、入札にはほとんど影響はなかった。

※この記事は、米国版ARTnewsに22年3月2日に掲載されました。元記事はこちら

Phillips London evening sale, March 3, 2022. HAYDON PERRIOR/THOMAS DE CRUZ MEDIAPhillips London evening sale, March 3, 2022. HAYDON PERRIOR/THOMAS DE CRUZ MEDIA

フィリップス、約4000万ドルを売り上げ、ウクライナ支援への寄付を表明

フィリップス・ロンドンは3月3日に近現代美術のセールを開き、計2990万ポンド(4000万ドル)を売り上げた。前年同期を上回った。ロシア最大の高級品小売企業の傘下にある同社は、同国によるウクライナ侵略の中で注目されている。フィリップスはこの日のセールから、売買手数料の収益をウクライナの救援基金に寄付すると表明していた。同日は計580万ポンド(770万ドル)を調達した。

この日の最高値はデビッド・ホックニーの《Self-Portrait on the Terrace》(テラスの自画像、1984年)で、最終価格は490万ポンド(650万ドル)だった。次いで、セシリー・ブラウンの《Time Ran Out》(2016年)が370万ポンド(420万ドル)で、落札予想額の2倍近い高値になった。

※この記事は、米国版ARTnewsに22年3月3日に掲載されました。元記事はこちら

Francis Picabia, Pavonia, 1929 on view at Sotheby's, Paris. SOTHEBY’S / MICHA PATAULTFrancis Picabia, Pavonia, 1929 on view at Sotheby's, Paris. SOTHEBY’S / MICHA PATAULT

シュルレアリスムのオークションが3700万ドル売り上げ、ピカビアなど予想額を超えて落札

サザビーズ・パリは3月16日、シュルレアリスム作品に絞った初のオークションを開いた。23ロットでプレミア込みの計3300万ユーロ(3670万ドル)を売り上げた。最高値を記録したのは、フランシス・ピカビアの《パボニア》(1929年)で、落札額は850万ユーロ(770万ドル)。プレミア込みでは1000万ユーロ(1100万ドル)で、ピカビアのオークション記録を塗り替えた。

また、マグリットの3作品も高値を付けた。《Lepaysagefantôme》は落札予想額を超えた220万ユーロ(240万ドル)、山高帽を被った人物を描いた《Le bon temps》(1966年)は130万ユーロ(140万ドル)、有名なディーラー、アレクサンドル・イオラスのために制作されたブロンズ彫刻《La Joconde(モナリザ)》は170万ユーロ(190万ドル)だった。

これまで男性作家のみが語られていたシュルレアリスムでも、女性作家の認知が進んでいる。ドロテア・タニングの黒とオレンジ色の抽象画《メレの夜想曲》(58年)は、56万7000ユーロ(62万1000ドル)と、予想額の倍近くで落札された。レオノール・フィニの肖像画《Sphinx for David Barrett》(54年)も、11万9700ユーロ(13万1100ドル)と落札予想額の倍以上の値を付けた。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年3月17日に掲載されました。元記事はこちら

クリスティーズ、オールドマスター部門責任者に元サザビーズの専門家を登用

2大オークションハウスが競り合う対象には人財も含まれるらしい。20年近く勤めたサザビーズを5月に去ることを発表していたアンドリュー・フレッチャーがこのほど、クリスティーズのオールドマスター部門のグローバル責任者に指名された。フレッチャーはサザビーズ時代にオールドマスター部門を担当していた。パンデミック後、ボッティチェリやレンブラントら著名な芸術家の絵画に焦点を当てることで、オールドマスター部門はにわかに活況を呈している。クリスティーズは、昨年1億4100万ドルを売り上げたこの部門の増強を企図している。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年3月23日に掲載されました。元記事はこちら

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