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  • 2022.04.26

NFT市場崩壊の兆し? ツイッター創業者のNFTが99%の値下がり

ジャック・ドーシーのNFTデビュー作は、2006年に自らが創業したツイッターに初めて投稿した世界初のツイート画像だった。

NFT問題のNFT OpenSea

NFTブーム初期の2021年3月、このツイートNFTは暗号資産Tron(トロン)の創業者、ジャスティン・サンを中心とした競り合いの末、290万ドル(約3億円)で落札された。このときサンに勝って落札した起業家のシーナ・エスタビは、21年5月に逮捕されたことから自身の暗号資産ビジネスが崩壊し、経済的苦境に陥っていた。

22年4月、エスタビはこのNFTを4800万ドル(約60億円)で出品し、収益の50%をアフリカの貧困層に直接現金を直接支給するGiveDirectly(ギブダイレクトリー)に寄付するとツイートした。ドーシーはこれを受けて「なぜ99%でないのか?」と揶揄(やゆ)している(ドーシーは最初の落札時に売り上げを全額寄付した)。

実際4月上旬にOpenSea(オープンシー)のオークションに出品されたものの(終了予定は4月14日だった)、最高入札額は280ドル(約3万5000円)。事実上、99%の値下がりだ。OpenSeaでは入札期間でなくても誰もがNFTを出品できるが、4月15日時点での最高提示額は約1万2000ドル(約150万円)と、出品額に比べればやはり微々たる金額でしかない。

これはNFT市場崩壊の前触れなのだろうか?

NFTマーケットプレイスのSuperRare(スーパーレア)の共同設立者であるジョナサン・パーキンスの言葉では、今回の顛末はNFT市場が成長痛の時期にあることの表れだという。

パーキンスは、ツイートのNFT化やPFP NFT(プロフィール画像NFT)への関心の高まりに触れながら、「この分野では実験的な試みが数多く行われている。今は投機の限界にきつつあるところだと思う」と述べた。パーキンスは21年の夏に盛り上がりが最高潮に達したNFT市場について、リスクを取る行動の上に成り立つものと見ている。

パーキンスは、「あのバブルは崩壊する運命にあった」と述べ、次のように付け加えた。「それは健全なことだ。この市場が長続きするものになるように、そして革命的かつアクセスしやすい市場にしようとしている我われにはやりやすくなる」

ジェネラティブアートNFTプラットフォーム、ArtBlocks(アートブロックス)のCEO、エリック・カルデロンも同じ意見だ。ArtBlocksへのアクセスは急増し、21年8月のピーク時にはパンク寸前になった。当時、カルデロンは「これは良くない、どう考えてもArtBlocksの未来ではない」と言っていた。

一方、Web3のデザイン会社、Late Checkout(レイトチェックアウト)のCEO、グレッグ・アイゼンバーグにとって、この一件は何も意味がないという。

アイゼンバーグはこう述べる。「これは現実的な売買とは言えない。これほどのものには数人の買い手しかつかないし、出品価格も非現実的だった。まともな買い手ならこんなものには入札しない。自分もしなかった」

アイゼンバーグは、本気の買い手がつかなかった理由を「4800万ドルで売りに出されている家を見に行って、50万ドルを提示する人はいないだろう」と説明する。しかし彼は、NFTの買い手が以前より慎重になっていることを認め、それは必ずしも悪いことではないとも話している。

NFT市場は、21年初頭からの数カ月で本格的に立ち上がったばかりで、それ以来、変動を繰り返している。ドーシーが20年12月に最初の、そして今のところ唯一のNFTをミント(作成・発行)した時は数万ドルの入札があったが、最終的には売却を拒否していた。

「NFT市場はできたばかりで、特に高価格帯のNFTの価値を見極めるのは難しい」とアイゼンバーグは言う。「エスタビはこのNFTに狙いを定め、『4800万ドルってところかな』と考えたというわけだ」(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月15日に掲載されました。元記事はこちら

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