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認めたくない真実:イケてないキュレーターがカリスマに生まれ変わるには?

  • 2022年9月30日
  • INTERNATIONAL

Text: Chen & Lampert

読者から寄せられたアートに関する質問に、ニューヨークを拠点とするアート事業のコンサルティング会社「Chen & Lampert(チェン&ランパート)」の設立者2人が答える連載。今回はイメージチェンジとソーシャルメディアに関するお悩みです。

Illustration by Barbara Kelley

質問:私はキュレーターになるため大学院で優秀な成績を収めたのだが、そこでは世の中で生き残っていくのに必要なことを教えてはくれなかった。院の修了後、いい感じの都市の美術館に就職し、アシスタント・キュレーターとして働き始めたが、あと2つほど展覧会をこなしたら転職しようと決めている。ほかに差をつけて次のステージに進むためには、大胆なイメチェンをしなければ。真面目な話、ハンス・ウルリッヒ・オブリストやアントワン・サージェント、ローズリー・ゴールドバーグといった有名キュレーターのように、独特な個性を持つカリスマとして一目置かれたいと思っている。トレードマークになるようなファッションについて、何か良いアイデアはないだろうか。

垢抜けないクライアントをシックな見た目に変身させようとするにあたり、私たちが踏む最初のステップは、展覧会のオープニング・パーティや華やかなチャリティ・イベントでその人を際立たせる「特別な何か」を見つけることだ。

もし、あなたの顔が普通すぎるなら、ファンキーなメガネをかけ、おかっぱ頭にして、英国訛りで話すのはどうだろう。印象が薄くて、忘れられそう? ならばいつもコカインを調達してくれる声の大きい売人に交際を申し込み、髪型をいびつなモヒカンにし、ズボンの上からパンツを重ね履きしてみよう。それでもまだイケてないと思うなら、バーでケンカでもして歯を何本か折れば、みんな動揺しながらも気遣ってくれるだろう。

忘れないでほしいのは、キャラ作りが重要だということ。若作りなトレンドウォッチャー、哲学者的DJ、ガミガミ屋のおばさん、サイコなポッドキャスター、はたまたドイツ製ロボットなど、どんなキャラでもいい。こう見られたいという人物像が決まったら、ブレずにそれに徹すること。間違っても素の自分は出さないように(笑)。

質問:プロのアーティストとして活動していて、心底やりたくない仕事がプロモーションだ。10年以上前にクールなウェブサイトを作ってもらったのだが、ここ何年も画像や情報をアップしないまま放置していて、2018年以降は作品を作っていないように見える。サイトの刷新も必要だが、もっと大きな問題はインスタグラムやツイッターなどのソーシャルメディア対応。ひょっとしたら、知らないうちにプラットフォーム側から制限をかけられたのか、単に投稿がアルゴリズムによって埋もれてしまっているのか……最近では誰1人として私の作品に「いいね!」をつけてくれないし、それどころか見てもくれていないような気がする。いいとこ16人しか見ないのに画像やお知らせをアップするのは恥ずかしいが、それでもやらねばという義務感がある。しかしそれが、振り払うことのできない実存的な苦しみとして私を苛んでいる。どうしたらいいものか。

作品を作ることと、それを宣伝することを切り離せたら、どんなにすばらしいだろう。子どもの頃はそれが可能だった。けれども、ひとたびプロになったら大人としての行動が求められる。さらにやっかいなことに、大人になったら自分以外の大人たちに自分の価値を証明しなければならない。単なる親のすねかじりではなく、れっきとしたアーティストだと認めてもらわないといけないのだ。ニコニコ笑っている太陽の絵や単純な棒人間を描いただけで、あなたには才能があり、頭が良く、愛されていると親が言ってくれていた子ども時代は、ずっと生きやすかっただろう。社会に出て厳しい現実を突きつけられる前は、親の言葉を真に受けていたに違いない。

アルゴリズムは、私たちの一番の望みや夢を打ち砕くよう設計されている。がんばった成果をほかの人たちに見てもらうのを手伝ってくれる代わりに、ピザの広告を大量に押し付けてきて私たちの心を折る。結局アルゴリズムには勝てない。それに従わざるを得ないのだ。絶え間なく投稿し続け、みんなのつまらない投稿にコメントし、見るもの全てに「いいね!」をするしかない。そうすれば、閲覧数はきっと上昇するだろう。でも、そんなことをしていたら、心が死んでしまうと思っているのではないか?  心を失えば、アートの世界でキャリアアップするのに有利かもしれない。とはいえ、このお悩み相談に頼らざるを得ないほどの実存的な苦悩がそれで消えるかどうか。

子どもか、甥、姪、あるいは従兄弟でもいい。テクノロジーに強く、あなたを助けてくれそうな若い血縁者はいないだろうか? 若い人にソーシャルメディアを外注して、様子を見てみてはどうだろう。アートの世界をよく知らず、、業界用語や正しい言い回しを知らなくてもいいではないか。とりあえず、注目度を上げることを目標にして任せてみたらいい。デジタルネイティブの彼らは、あなたの作品を売り込むことに何の苦痛も感じないだろう。運が良ければ、あなたの作品がミーム化して一時的にバズるかもしれない。もちろん、誰も気づいてくれない可能性だってある。だったとしても現状と何ら変わらないので、失うものは何もない。実際、ネットのことを気にせずにアートに専念できるのだから、どう転んでもいい話ではないか。(翻訳:野澤朋代)

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※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月16日に掲載されました。元記事はこちら

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