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口座残高が暴露されるATM? アートバーゼル・マイアミでMSCHFの新作が話題

  • 2022年12月1日
  • INTERNATIONAL

Text: Shanti Escalante-De Mattei

ギャラリストがアートフェアに来た客の経済力を見抜くのは至難の業だ。しかし、それを容易にする作品がアートバーゼル・マイアミビーチのペロタンブースで展示されている。

MSCHF《ATMリーダーボード》(2022)。Photo: Courtesy PERROTIN

それが、ブルックリンを拠点とするアートコレクティブMSCHFの新作である特別なATM。この《ATMリーダーボード》(2022)を利用すると、利用者の銀行口座の残高が公開されるという仕組み。ATM製造会社から譲り受けたATMに、「リーダーボード」の文字をあしらった画面とカメラを取り付けたこの作品にデビットカードを挿入して暗証番号を入力すると、カメラが利用者を撮影し、口座残高が画面に点滅する。そしてアニメーションで、参加者が裕福であるかそうでないかを表示するのだ。 ARTnewsの記者がカードを入れると、お金が詰まったトイレのアニメーションとともに大きな青い文字で「 さよなら!(BYE!)」と表示された。 

誰も使用していない時は、画面にこれまでの利用者の口座残高と写真がランキング形式で表示される。取材時はピンクのTシャツを着た若い男性が1位で、彼の残高は約200万ドル(約2億7000万円)だった。さらに下にスクロールされていくと、1.75ドル(約240円)の人が出てきた。 

人々がこの作品を前にすると、それが何であるか、何をするものであるかを理解し、「自分の銀行口座にいくらお金があるのか、それを皆に本当に知ってもらいたいのか」と自問しなければならない。その一連の行動がショーなのだ。プレビューに出席したあるVIPは、顔を出すのに抵抗があるため、MSCHFのメンバーにカードの運用を代行してもらったそうだ。 

MSCHFのアーティスト、ケヴィン・ワイスナーによると、よくあるのは、4人くらいのグループで一緒に機械に近づき、1人は覚悟を決めてカードを入れるものの、いざ機械を前にすると「やっぱり......ダメかも」と躊躇してしまうケースだそうだ。そして、おそらくその判断は正しい。なぜならば、第三者による審判が必ずやってくるから。ATMを通りかかった人が画面を見て、「ああ、あの人はもっと貯金すべきだ......」と言っているのを聞いたとワイスナーは明かす。 

また、MSCHFのリズ・ライアンは、「カードを挿入するか否かにかかわらず、誰もがその瞬間を味わうことができるのがこの作品の面白いところ」「利用者には『本当にやっていいのか』と内省する間が見られる」という。

今回がアートフェア初出展となるMSCHFは、プレビューに訪れる富裕層が、このATMに対してこれほど躊躇し、ときに不安さえ感じるとは想像していなかったようだ。 

「みんな派手好きで、目立ちたがり屋だろうと思っていた。でも、そうではなかった」とワイズナーは語る。「だから、実際に試す人は思いのほか少なかったのが実際のところ。でも、(誰か特定されたくなければ)カメラの前で看板を掲げたり、大勢で集まったりすればいい。金を配り歩いた結果、残高が420ドルしかない、というような人が現れるのを待っているところ」 

プレビュー後、作品が一般公開された時の反応をMSCHFは楽しみにしている。さらには、バーゼル・マイアミが終了した後も作品と触れ合える機会ができることを願っている。その願い通り、ペロタンの担当者によると、この作品を7万5000ドルで購入した地元マイアミのコレクターは、一般の人が作品を試せるように展示するつもりだという。(翻訳:編集部) 

from ARTnews 

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