對木裕里は石膏(せっこう)を中心に、さまざまな素材を取り入れた立体作品を制作している彫刻家。粘土をこねた手指の感触が残るような素朴な造形と、パステルカラーの彩色を特徴とする。抽象的な形の作品を野菜や果物と組み合わせて構成することもある。壁面に掛けて展示する浮き彫りのような作品も。時折登場するジャガイモのモチーフは、自然界に存在する、天地や表裏のない形状の象徴として用いている。對木の彫刻の基本的な制作方法は、水粘土で原型を作り石膏で型取りをするもの。もともとデザインの分野に興味があり、インテリアデザインから彫刻まで幅広い仕事をこなしたイサム・ノグチの作品に触れたことをきっかけに、武蔵野美術大学の彫刻科に入学。素材の選択によって制作方法が全く異なる彫塑(ちょうそ)表現に面白さを見いだした。物理的な制約をむしろ表現の可能性ととらえ、新しい彫刻を模索しているという。