香港の現代アートシーンを先導する革新的スペース、パラサイト。新ディレクターが決定
型破りでアグレッシブな企画で知られる香港のアートスペース、パラサイト(Para Site)は、次期ディレクターにビリー・タンを指名。タンは、2011年からパラサイトを率いて今日の評価を確立したコスミン・コスティナスの後を継いで就任する。
パラサイトの発表によると、コスティナスの辞任は2022年半ばにドイツの美術関連機関に移るためという。コスティナスは現在、香港の外で二つの大きなプロジェクトを進めている。一つは2月初めにネパールで開幕したカトマンズ・トリエンナーレ、もう一つは4月に開幕する第59回ヴェネチア・ビエンナーレのルーマニア館だ。同館では、アディナ・ピンティリエの新しいフィルムインスタレーションが展示される。
コスティナスは、2015年に森美術館のMAMリサーチ第一弾として開催された「グレイト・クレセント:1960年代のアートとアジテーション—日本、韓国、台湾」をはじめ、さまざまな展覧会をキュレーションしてきた。2013年の「A Journal of the Plague Year(疫病の年の記録)」(*1)は、2003年のSARS流行時の恐怖を考察するものだが、まるでコロナ禍を予見していたようだと再び注目されている。
また、コスティナスはパラサイトの移転も行い、その規模や影響力を拡大させた。コスティナスのもとで開催された展覧会の多くは国際的な美術館に巡回したが、これは小規模なアートスペースにとっては異例なことだ。
コスティナスは声明で次のように述べている。「パラサイトで仕事ができたのは、とても名誉なことでした。香港の歴史において、さまざまな議論や文化、国際交流が大きく発展したこの10年間に立ち会えたことに、これからも感謝の気持ちを持ち続けると思います」
ビリー・タンは現在、2019年に上海で初のアートNPOとなった私設美術館、ロックバンド美術館のシニアキュレーターを務めている。ロックバンド美術館の展示は、世界でも知名度が高く、アート市場での地位が確立されているアーティストを扱う傾向があるが、タン自身はアーティスト・ラン・スペース(*2)にルーツがあり、2013年から2018年にかけては北京のMagician Space(マジシャンスペース)を運営していた。
タンは、1970年代に難民として香港にやってきたベトナム人の両親について触れつつ、次のように声明で述べている。「まず、パラサイトの持つ力を再考することに集中したい。そして、現代アートと現在の価値観の間に共通点を見出し、香港と世界を結ぶ道を切り開き、さまざまなアイデアを持つ多様なアーティストをサポートし、結びつけていきたい」
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月23日に掲載されました。元記事はこちら。