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合衆国憲法初版の共同所有に挑む、暗号資産集団DAOの野望

サザビーズによるアメリカ合衆国憲法の初版の販売が、オークション開催を数時間後に控えた12月13日の朝、突然延期された。 その理由とは?

オークション予定だったアメリカ合衆国憲法の初版。Photo: Courtesy Sotheby’s

オークションに出品される予定だったアメリカ合衆国憲法の初版は、500部現存する中のひとつ。この延期についてサザビーズの広報担当者は、「初版の売却は、委託者と協議の上、利害関係のある機関投資家に資金調達のための時間を与えるために延期されました」と説明している。 

この初版が今後オークションで販売されるのか、個人で取引されるのか、現時点では不明だが、一連の出来事で打撃を受けたのは、初版買い取りのために組織された暗号資産集団「ConstitutionDAO 2」だ。 

昨年も合衆国憲法の初版のひとつがサザビーズで競売にかけられたが、このときDAOのメンバーが、予想落札額の1500万ドルよりもはるかに高い4千万ドル以上を集めて落札に挑んだことが世界的なニュースとなった。しかし、保守派の支援者でヘッジファンド「シタデル」の創設者であるケン・グリフィンが4千300万ドル(約50億円)で落札し、DAOの挑戦は失敗に終わった。 

つまりDAOは、今回のオークションで再戦に挑もうとしたわけだ。暗号資産市場は昨年のような盛況ではないが、暗号資産コミュニティがオークションに姿を現すことが重要だとDAOの仕掛け人の1人であるマット・ワイアットは考えている。 

ワイアットはUS版『ARTnews』の取材に対して、「私たちは、暗号資産という民主的な技術に関心を持ち続け、どれだけ進歩したかを示したかった。真剣で献身的であることを人々に示したい」と話した。 

以前、DAOが資金調達を行う際、2つの大きな問題に直面した。1つ目は、DAOの公共性の高さである。ブロックチェーン上にすべての情報が記録されているため、競合相手はグループがいくら調達したかを知ることができるのだ。2つ目は、返金の分配。ブロックチェーン上で取引するのにかかる価格、いわゆる「ガス代」のために、払い戻しを受けたい人は、法外な金額を支払わなければならなかった。 

DAOは31万3千ドル相当(約4200万円)を調達したと公表し、これらの問題は解決されたと話す。加えて、私財の用意があるとも主張している。 

ワイアットは、まだDAOが今回の出品に入札出来る可能性があると期待しているようだ。「エキサイティングなのは、歴史文書の専門家が、私たちが入札する予定のものと同じ印刷機で刷られた別の版を買う機会を与えてくれたこと。こちらの方が圧倒的に資本効率が良いんです」(翻訳:編集部) 

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