ルーベンス作品とは知らずに565万円で買った絵画がサザビーズに登場! 予想落札額は10億9000万円
バロック期におけるフランドル絵画の巨匠、ピーテル・パウル・ルーベンスの作品《Saint Sebastian Tended By Two Angels》が、7月上旬にサザビーズ・ロンドンでオークションにかけられることが発表された。予想落札額は770万ドル(10億9000万円)だという。
アートネット・ニュースによると、《Saint Sebastian Tended By Two Angels》は2008年にアメリカ・セントルイスのオークションハウスIvey-Selkirkでフランスの画家Laurent de la Hyreの作品として出品され、4万ドル(現在のレートで565万円)で落札された。オークション時にルーベンス作品ではないかと注目を集めていたため、学者たちが鑑定をした結果、ルーベンスのものであることが明らかになった。今回は判明して初のオークションになる。
この作品は何世紀にもわたって、ローマのコルシーニ美術館に所蔵されているルーベンスの《Saint Sebastian Tended By Angels》の模写だと思われていた。しかし、2021年にドイツのシュトゥットガルトで開催された展覧会でこれら2枚の絵が集まった時に、学者たちはX線などで調査をした。その結果、《Saint Sebastian Tended By Two Angels》がオリジナルで、コルシーニ美術館の絵はコピーであると判断された。
サザビーズがこの作品に添えた文章の中でも、当時鑑定に携わった美術史家でフランドル美術専門家のアンナ・オーランドによる「2021年にドイツで行われた非常に有用な比較は、《Saint Sebastian Tended By Two Angels》がより高い品質であることを明らかにしました」というコメントが引用されている。
この絵は1600年代後半、ジェノバ共和国の主要な貴族で軍司令官のアンブロジオ・スピノラが依頼したものだと考えられている。絵画は、しばらくその一族に受け継がれたが、後継者に男性がいなくなり、女系で受け継がれるようになったため、以後スピノラ家の名で絵画を追跡することは不可能になった。そして1963年に突如ミズーリ州で見つかり、2008年にオークションに出品された。この230年の空白を埋めるための資料集めに、学者たちは苦労している。(翻訳:編集部)
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