• CULTURE
  • NEWS
  • 2023.07.14

今週末に見たいアートイベントTOP5: 平安の呪物から村上隆のフィギュアまで「 私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」、人間の記憶に着目した作品を発表「エキソニモ展」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

山田 康平 「無題」、2022 年 キャンバスに油彩 91 x 72.7 cm © Kohei Yamada Courtesy of Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi

1. 大山エンリコイサム個展「Notes Rings Spirals」(アニエスベー ギャラリー ブティック)

大山エンリコイサム《FFIGURATI #508》2023年 / 部分 / Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio

アニエスべーのコンセプトシートを用いた新作34点を発表

1983年に東京で生まれ、現在は東京とブルックリンで制作を行う大山エンリコイサム。代表的なモチーフ「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」を配したメディア横断的な作品で知られる一方、ストリートアートに高度な表現性を見出し、それにまつわる著書の出版や数多くの媒体への寄稿を続けている。

同ギャラリーを運営するアニエスベーが1984年にパリに開廊したギャラリー デュ ジュールは、当初からストリートを活動の場とする多くのアーティストたちを紹介してきた。

ストリート文化に精通する大山が本展のために制作した34点の作品には、アニエスベーが過去に制作したコンセプトシートが使用されている。シートに印刷されていたオリジナルのイメージや、シート裏に存在する別のイメージといった目に見えない構成要素の積層が時間の厚みを想像させ、そこにQTSの造形が重ねられる。そして作品をカタログのページに見立て、大山が本展に特有の新しいモチーフとして見出したスパイラルリングをそのかたわらに設置することで、展覧会の空間とカタログの空間が補完し合っているような複雑で豊かな空間が生み出されている。

大山エンリコイサム個展「Notes Rings Spirals」
会期:6月17日(土)〜 7月30日(日)
会場:アニエスベー ギャラリー ブティック(東京都港区南青山5-7-25 ラ・フルール南青山2F)
時間:12:00 〜 20:00


2. 山田康平「Strikethrough」(タカ・イシイギャラリー)

山田 康平 「無題」、2022 年 キャンバスに油彩 91 x 72.7 cm © Kohei Yamada Courtesy of Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi

色で「覆う」ように描くことで生み出される独特の世界

実験的な色と形で抽象表現を探求する山田康平。山田の制作は、カンバスと紙にたっぷりとオイルを染み込ませるところから始まる。それによって絵の具が画面に染み込んだオイルや隣の色と溶け合い、色面が構成されていく。自身も、「描く」よりも「『覆う』であったり『隠す』という言い方の方が、自分の絵を観ていると納得することが多い」と語るように、筆や刷毛を用いて大きくストロークさせることでカンバスを丹念に色で覆い、独特のグラデーションと奥行を絵画空間に生み出している。

本展では、大小さまざまなカンバスに描いた油彩画と、アルシュ紙を用いた小作品を展示する。個展のタイトル「Strikethrough」には、取り消し線と、印刷用語で紙の裏までインクの油分がにじみ出る現象を指す2つの意味がある。画面が色で覆われ、重ねた色が混ざり合っている状態や、カンバスに染み込んだオイルの様子を表しているという。

山田康平「Strikethrough」
会期:7月1日(土)〜 7月29日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー(東京都港区六本木6-5-24 complex665 3F)
時間:12:00 〜 19:00


3. 私たちは何者? ボーダレス・ドールズ(渋谷区立松濤美術館)

村上隆 《Ko²ちゃん(Project Ko²)》1/5原型制作 BOME(海洋堂)1997年 個人蔵  ©1997 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

日本の人形を通じて「芸術」を考察

ひな人形や生(いき)人形、マネキンやフィギュアなど、体系化することが難しいほどに多様な種類にあふれる日本の「人形」。本展は、こうした日本の人形の歴史を振り返りながら、あえて「芸術」という枠に押し込めず、多様性をもつ人形そのものとして紹介する。

展示は10章で構成され、平安時代から現代まで各時代を代表する人形が並ぶ。平安時代の呪具であった考古遺物・人形代(かたしろ)や、民間信仰の場で使用されたオシラサマといった民俗資料のほか、昭和時代初期の「人形芸術運動」が盛んだった頃に活躍した平田郷陽や堀柳女らの作品、「オタク」文化の中で育まれたフィギュアをハイアートに昇華させた、現代美術家の村上隆とフィギュア原型師のBOMEによる作品などを展示する。※会期中一部作品展示替えあり、18歳以下(高校生含む)は一部作品鑑賞不可。

私たちは何者? ボーダレス・ドールズ
会期:7月1日(土)〜 8月27日(日)
会場:渋谷区立松濤美術館(東京都渋谷区松濤2-14-14)
時間:10:00 〜 18:00(金曜は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)


4. エキソニモ 個展『On Memory』(WAITINGROOM)

《On Memory》2023年、イメージ

作品の永続性とはかなさを「記憶」を通じて問う

千房けん輔と赤岩やえによるアートユニット、エキソニモ。1996年にインターネット上で活動を開始し、2000年から実空間でのインスタレーションや パフォーマンス、イベントオーガナイズなどへ活動を広げてきた。

本展は、人間の記憶に着目し、「記録/記憶」とその永続性をテーマとした新シリーズを中心に構成される。額装されたモニターの中に、インターネットブラウザの検索バーのような形状が表示され、その中に短い文章が入力される。この文章は、モニターの電源を切ると消えてしまうため、電源を入れる度に入力し直す必要がある。この文字列を写真やメモで記録することは禁じられており、スタッフ間の共有は記憶に基づいた口頭伝承のような形で行われる。

現代はあらゆる情報をデジタルデータとして記録することができ、ブロックチェーン技術の登場によりさらにその永続性が高まったとされているが、人間の記憶を必須の条件として成立する作品は、いつまで「作品」であり続けられるのか。デジタルデータや美術作品の永続性、そのはかなさを、独自のユーモアをもって浮き彫りにする。

エキソニモ 個展『On Memory』
会期:7月6日(木)〜 8月6日(日)
会場:WAITINGROOM(東京都文京区水道2-14-2 長島ビル1F)
時間:12:00 〜 19:00(日曜は17:00まで)


5. Parallel Lives 平行人生 ― 新宮 晋 + レンゾ・ピアノ展(大阪中之島美術館)

新宮晋《はてしない空》(1994年)+レンゾ・ピアノ「関西国際空港旅客ターミナルビル」(1988-1994年)4F国際線出発フロア、2016年 撮影:石田俊二 (RPBW) ©RPBW-Renzo Piano Building Workshop Architects

日本とイタリアの巨匠2人の軌跡を振り返る

大阪出身の彫刻家の新宮晋と、ジェノヴァ出身の建築家のレンゾ・ピアノの2人展。1937年生まれの2人がこれまでコラボレーションしてきた作品を中心に、個々の活動や作品も併せて紹介する。

「関西国際空港旅客ターミナルビル」でのコラボレーションを機に、数々のプロジェクトを手がけてきた2人。これまでのプロジェクトを、緻密に造形された模型やプロトタイプ、そしてイタリアのグループ「スタジオ・アッズーロ」が制作した映像で詳しく紹介する。そのほか、現在日本で進行中の2人の最新プロジェクトも明らかに。

また、新宮晋の活動初期から今日までの象徴的な彫刻作品を展示するほか、 レンゾ・ピアノの歴史的名作を含む代表作を、模型や映像で紹介する。

Parallel Lives 平行人生 ― 新宮 晋 + レンゾ・ピアノ展
会期:7月13日(木)〜 9月14日(木)
会場:大阪中之島美術館 5階展示室(大阪府大阪市北区中之島4-3-1)
時間:10:00 〜 17:00(入場は閉館の30分前まで)

  • ARTnews
  • CULTURE
  • 今週末に見たいアートイベントTOP5: 平安の呪物から村上隆のフィギュアまで「 私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」、人間の記憶に着目した作品を発表「エキソニモ展」