ARTnewsJAPAN

ヴェネチア・ビエンナーレのバチカン館代表作家はマウリツィオ・カテランに決定!

18金でできたトイレ《America》などの作品で知られるコンセプチュアル・アーティストのマウリツィオ・カテランヴェネチア・ビエンナーレのバチカン館の代表を務めることが決まった。ジュデッガ島女子刑務所に設けられるバチカン館では、カテランをはじめとするアーティスト以外にも、収監者が作品制作に関わるという。

カテランによる、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世が隕石に打たれて横たわっている等身大の蝋人形《The Ninth Hour (La Nona Ora)》(2000年)Photo: Getty Images

イタリアのコンセプチュアル・アーティスト、マウリツィオ・カテランヴェネチア・ビエンナーレのバチカン館の代表作家に決定した。

発表によると、カテランは8人のアーティストの作品を駆使した屋外インスタレーションを制作し、それをジュデッガ島にある女子刑務所に設置するという。また、展示されるいくつかの作品制作には受刑者たちも携わるようだ。

物議を醸す彫刻やインスタレーションで知られるカテランが、カトリック教会の総本山を代表するのは意外にも思える。彼の代表作には、跪くヒトラーをかたどった彫刻作品《Him》や、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世が隕石に押しつぶされて横たわっている等身大の蝋人形《The Ninth Hour(La Nona Ora)》などが含まれる。後者の《The Ninth Hour(La Nona Ora)》は、2001年のヴェネチア・ビエンナーレなど複数の施設で展示されている

カテランの作品が一般にも広く知られるようになったのは2019年こと。ダクトテープで壁に貼り付けられたバナナを貼り付けた作品《Comedian》を、ペロタン・ギャラリーがアート・バーゼル・マイアミ・ビーチで発表したのだ。12万ドル(現在の為替で約1780万円)で落札されたこの作品は、最終的にアーティストのデビッド・ダトゥナに食べられてしまった。この作品は2023年にソウルのリウム美術館で再び展示されたが、これも同様に、韓国の学生の胃袋の中に収められた

ビエンナーレのためにカテランが制作する作品には、俳優のゾーイ・サルダナと彼女の夫であり映画監督のマルコ・ペレゴ=サルダナが監督した12分の映像インスタレーションが含まれる。制作に参加する受刑者のなかには、映像の登場人物を演じる者もいれば、フランス人アーティストのクレール・タブレが手がける作品のために幼少期の写真を提供する者もいる。また、レバノン系アメリカ人のアーティストであるシモーネ・ファタルは、受刑者たちが書いた詩をもとにインスタレーションを制作するようだ。

《With My Eyes》と題されたこの展示は、ポンピドゥー・センター・メスのディレクターを務めるキアラ・パリジと、フランス国立図書館のプレジデントを過去に務めたブルーノ・ラシーヌによってキュレーションされた。《With My Eyes》は4月20日〜11月24日まで公開される見通しだ。

バチカン市国は2013年からこのビエンナーレに参加している。バチカンの文化大臣を務めるジョゼ・トレンティーノ・デ・メンドンサ枢機卿は3月11日に開いた記者会見で、2024年のバチカン館をジュデッガ島女子刑務所に設置することは「予想外」だったと語っている。しかしこの決定は、飢えに苦しむ人々への配慮にまつわる福音の教えと、収監されている人々への共感をもつべきだ、というフランシスコ法王の訴えを尊重したもの。枢機卿は、こう続ける。

「私たちが社会的、文化的、そして精神的な共存をどのように考え表現し、構築するのか。『With My Eyes』は、その重要性に責任をもって焦点を当てたいと考えています。自分の目で見ることによって私たちは、現実に直接的な関係をもち傍観者ではなく当事者になります。これによって、人それぞれの視点が生まれるのです。世相における権力構造と反体制的な意味合いを重視し続けている。それが、宗教的体験と芸術的体験にある共通点だと考えます」(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい