マウリツィオ・カテランの《コメディアン》を空腹の学生がパクリ! 韓国の美術館でパフォーマンス
マウリツィオ・カテランが2019年に発表した、バナナをダクトテープで貼り付けた作品《コメディアン》が、今、韓国で再び話題になっている。現在、ソウルのサムスン・リウム美術館で開催中のカテランの個展「WE」(7月16日まで)で、学生が展示中のバナナを食べてしまったのだ。
《コメディアン》(2019) が、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチで初公開された当時は、大きな論争を巻き起こした。それは今も変わらないようだ。
コリア・ヘラルド紙によると、4月30日にカテランの展覧会を訪れた、ソウル大学の美術専攻の学生が展示中のバナナを食べ、その皮を壁にテープで貼り付けたという。この学生は、記事中では名前が出てこなかったが、後にガーディアン紙がNoh Huyn-sooという人物で、「朝食を抜いたのでお腹が空いていた」と主張したと伝えている。
しかし、彼はコリア・ヘラルド紙に対して、バナナを食べること自体、ある種のパフォーマンスだったと明かし、「現代美術の作品を傷つけることも(一種の)アートワークと解釈できる」と語っている。
Nohの行動は、2019年に《コメディアン》が初公開された当時、アーティストのDavid Datunaがアート・バーゼル・マイアミ・ビーチのペロタンブースを訪れ、パフォーマンスとしてバナナを食べた行為と密接に関連している。その直後、作品は安全性を懸念し、ブースから撤去された。
《コメディアン》の発表当初、人々は、このようなものがアートと言えるのか、と戸惑った。その理由の1つは、12万ドル(現在の為替で1600万円)という高額な価格設定にある。一方で、この作品には擁護派もいた。US版ARTnewsコントリビューター、アンドリュー・ラセスはこう書いている。
「賢明でまともな人は、おそらくこの作品を無視するだろう: だが、私はこのバナナが大好きだと認めることにする」
この作品は発表以来、様々な理由で注目を集めてきた。2022年、アーティストのジョー・モーフォードは、《コメディアン》が、彼が13年前に制作した作品を盗用したものだとしてカテランを訴えている。
リウム美術館の広報担当者はCNNの取材に対し、Nohに対して何らかの措置を取っていないことを明らかにした。そして同美術館の代表は、以下のように語っている。
「突然起こったことなので、特に対応はしていません。カテランに事件のことを知らせたが、それに対して何の反応もありませんでした」(翻訳:編集部)
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