ARTnewsJAPAN

現代アート市場が回復。過去1年間の売上高が27億ドル規模に

アートマーケット情報のデータベースを提供するArtprice(アートプライス)の年次報告書によると、2020年6月末〜2021年6月末の期間に、現代アートのマーケットは27億ドルという記録的な売り上げをたたき出した。新型コロナの世界的感染拡大が始まり、ギャラリーの売り上げが36%減少したとされる2020年前半のアートマーケットの落ち込みから、驚異的な回復を見せている。

クリスティーズで落札された、ビープルのNFTアート《Everydays: The First 5000  Days(エブリデイズ:最初の5000日)》(2021) Christie's Images Ltd. 2022
クリスティーズで落札された、ビープルのNFTアート《Everydays: The First 5000 Days(エブリデイズ:最初の5000日)》(2021) Christie's Images Ltd. 2022

Artpriceのリポートによると、コロナ禍でオークションがオンラインに移行したことで、バイヤーが購入する作品の種類に変化が起きている。2021年は特に、デジタル化しやすい作品が好調だ。ArtpriceのCEO、ティエリー・エールマンはリポートの序文で、「写真と版画は、この新しいオンライン環境において特に活況だ」と述べている。同氏は「また、完全に非物質化されたアート作品、つまり、あの名高いNFTの登場も衝撃的だった」とも指摘する。一方、彫刻作品の需要は減少している。

NFT(非代替性トークン)は、オンライン売り上げの3分の1、アートマーケット全体の2%を占める。中でも画期的だったのが、クリスティーズにおけるビープル(Beeple、本名はマイク・ヴィンケルマン)の NFT作品《Everydays: The First 5000 Days(エブリデイズ:最初の5000日)》(2021)の落札で、6930万ドルの値をつけた。クリスティーズの発表によると、NFT初の公開オークションを目撃した参加者の60%が40歳以下だという。

クリスティーズでNFTオークションが開催されるたびに、より若く、より国際的な参加者を引き寄せる傾向が続いている。オークションハウスを除いても、2021年の第2四半期だけでNFTの取引額は24億ドルに達している。

しかし、アートマーケットが好調な理由はNFTだけではない。Artpriceのリポートは、アジア市場が現代アート販売の成長を後押ししていることを伝えている。今年のオークションでは売り上げの40%を中国が占め、米国の32%を上回っているが、販売拠点で見ると香港は僅差(きんさ)でニューヨークの後塵(こうじん)を拝した。なお、売り上げシェア3位はイギリスの16%。

現代アート分野で最も売れたアーティストは、1位がジャン=ミシェル・バスキア、2位がビープル。また、米国を拠点とする中国人アーティストの陳丹青(Chen Danqing)が3位に入り、中国美術としての記録を作った。陳氏の絵画作品《Shepherds(遊牧民)》(1980)は、6月に開催されたポーリーインターナショナル春季オークション(北京)において、2520万ドルで落札されている。

最も多くの作品が販売されたのはKAWSで、オークションでの販売数は1682点に上る。一方、村上隆の販売点数は1591点だった。(翻訳:石井佳子)

※本記事は、米国版ARTnewsに2021年10月4日に掲載されました。元記事はこちら

あわせて読みたい