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3200年前のエジプト貴族の墓所群を発見。埋葬された人物の記録がある神殿状の墓も

エジプト・カイロから30キロほど南にあるサッカラで、考古学研究者たちが約3200年前の墓所群を発見した。古王国時代に首都とされたメンフィスで暮らしていた貴族階級のものと見られる。

古代エジプトの歴史的遺物が多く見つかっているサッカラで発掘作業中の考古学研究者。ペピ1世のピラミッドや巫女の彫刻、ファラオ時代の陶器などの遺物が発見されている(2023年1月26日撮影)。Photo: Fareed Kotb/Anadolu Agency via Getty Images

ライデン国立古代博物館のプレスリリースによると、今回の発掘は同博物館のエジプト・ヌビア部門キュレーター、ララ・ワイスとダニエル・ソリマン、そしてイタリア・トリノにあるエジプト博物館のクリスチャン・グレコ館長の指揮下で行われている。

発掘チームは、小さな神殿のような形をした複数の墓を発見。中には、埋葬された人物に関する詳細な情報が記されたものもあった。最も大きな墓は、カルナックにあるアメン神殿の神官、パネシーのものとされる。アメリカ考古学協会が発行するArcheology誌のウェブサイトによると、パネシーの墓は精巧な作りで、入り口には門があり、中庭、円柱で支えられたポーチのほか、地下の埋葬室に通じるトンネルが見つかった。

墓所の装飾には、ホルス神の母である女神ハトホル(習合によってイシスと同一視される)をあがめるパネシーの像も見られる。美しく若い女性の姿で描かれることが多いハトホルは、日輪や獅子、牛などをかたどった頭飾りをつけている。また、パネシーが「アメン神の歌い手」である妻バイアとともに供物台の前に座っている彫刻もあった。

オンラインメディアのHyperallergicによると、この遺跡からは4つの小さな墓も見つかっている。そのうち1つは王室の宝物庫で金細工に携わったユユという人物のものだが、ほか3つが誰のものかは特定されていない。

古代エジプトにおける社会動態を研究しているライデン国立古代博物館のワイスは、墓所から垣間見える当時の生活に魅了されたとし、こう語っている。「古代エジプトの人々が墓の装飾をどう決めたのか、他者からの影響はあったのか、こうしたことが社会における人間関係について何を物語っているのかなど、興味は尽きない」

ライデン国立古代博物館は1975年からサッカラで発掘調査を行っており、2015年にはトリノのエジプト美術館が正式なパートナーとしてプロジェクトに参加した。サッカラでは今年に入り、エジプトで最も古いと見られるミイラが発見されている。(翻訳:石井佳子)

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