「イスラエルとハマスの軍事衝突による影響は少ない」──大エジプト博物館が来春ついに開館へ
20年の歳月と巨額の資金をかけて建設された大エジプト博物館(GEM)が、度重なる延期を経て来春開館される予定だ。「単一文明を扱う博物館では世界最大級」を謳うGEMは、考古学・歴史分野における世界有数の研究センターとしても期待を集める。
エジプト・カイロ郊外、ギザの大ピラミッド近くに建てられた大エジプト博物館(GEM)の敷地面積は48万平方メートル、展示面積は約5万平方メートルで、12の展示ホールと10万点を超える所蔵品を誇る。
考古学的な価値の高い古代エジプトの宝物の中には、1922年に発見されたツタンカーメンの墓から出土した全5000点の遺物、高さ9メートルに及ぶ約3200年前のラムセス2世の彫像などがあり、隣接する別館にはクフ王の「第1の太陽の船」が展示される。この船は、紀元前2500年代に大ピラミッドに隣接する場所に埋められた副葬品で、非常に良好な保存状態で見つかった。
同博物館の設計を手がけたのは、2003年の国際コンペティションを勝ち抜いたアイルランドの建築設計事務所ヘネガン・ペン。しかし、アーキテクチュラル・ダイジェスト誌によると、2008年の金融危機や2011年のアラブの春、そして2020年来のコロナ禍など、GEMの建設は度重なる試練に見舞われ、遅れが生じていた。
2022年3月のビルディング・デザイン+コンストラクション誌の記事によれば、「99%完成しており、残りの1%は2022年11月に予定される開館に向けた最終仕上げとロジスティクスだ」とされていた。一方、アーキテクチュラル・ダイジェスト誌は「2023年末のオープンがささやかれている」と報じたが、最新の情報では、今年9月に来日したエジプトの考古学者ザヒ・ハワス博士が会見で、同館は2024年3月に開館予定だと述べている。
エジプト政府は、今後5年間でエジプトへの観光客数を倍増させ、2028年までに3000万人の達成を目指すとしており、GEMはその計画の一翼を担う。エジプトの観光相は、現在ガザ地区で続いているイスラエルとハマスの大規模衝突による観光客の予約キャンセルは10%以下と、影響はごくわずかだとロイターに語った。一方、インディペンデント紙の取材に応じたツアーオペレーターは、「エジプトの紅海沿岸リゾート地の予約には8割減になったところもある」と答えている。
今のところ、世界的にはエジプトへの渡航制限に目立った動きはないが、アメリカ国務省は2023年7月以降、テロ攻撃や軍事衝突の可能性拡大を理由に、エジプトへの渡航を控えるよう勧告している。(翻訳:石井佳子)
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