イスラエルの空爆で多数の文化遺産に被害。ガザ地区の歴史的な宗教施設や遺跡、博物館なども対象に
イスラエルによるガザ地区への度重なる空爆で、100を超える文化的建造物や史跡が損壊したことが分かった。スペイン・カタルーニャ州を拠点とするNGO、ヘリテージ・フォー・ピースが11月上旬に発表した仮報告書で明らかにした。
10月7日のハマスによるイスラエル襲撃では、約1400人が犠牲になり、240人近い人質が連れ去られた。それを受けて始まった空爆は、ガザ地区にある住宅のおよそ45%を「破壊または損壊」し、国連が「人道的大惨事」と呼ぶ事態を招いた。
ガザは、紀元前15世紀初頭の古代エジプトから、古代ギリシャのアレキサンドロス大王やローマ帝国、ビザンティン帝国に至るまで、この地域を征服したさまざまな文明の十字路だった。今回、スペイン・カタルーニャ州を拠点とするNGO、ヘリテージ・フォー・ピースが発表した仮報告書は、その点に触れつつ、歴史的な宗教施設や遺跡、博物館などが被害を受けたとしている。
ガザ北部のジャバリヤにあるアル=オマリ・モスクなど、何世紀も前に建てられたモスクや教会などが爆撃されたという報告もある。その中には、世界で3番目に古いとされる聖ポルフィリウス教会のほか、イブン・ウスマーン・モスクやサイード・ハシェム・モスクが含まれている。
シリアの考古学者で、ヘリテージ・フォー・ピースの代表を務めるイスベル・サブリーンは、「ガザ地区は小さいですが、数多くの文化遺産があります。この報告書はガザの遺産の重要性を指摘しています」とコメントした。
しかし、パレスチナの観光考古省によると、ガザの現状ではこうした文化遺産が被った損壊の程度を完全に把握することは不可能だという。同省の博物館・発掘部門長であるジェハド・ヤシンは、アートニュースペーパー紙の取材に「今のところ、(ガザのスタッフに)調査を依頼することはできません」と答えている。
空爆はガザ地区の博物館にも打撃を与えている。エジプトとの境界にあるラファ博物館でも被害が報告され、同博物館は建物の一部が崩壊しているように見える動画をフェイスブックに投稿。さらに、アル・カララ文化博物館やデイル・アル・バラにある博物館も被害を受けた。(翻訳:石井佳子)
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