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NFT盗難防止策不備への訴えをネバダ州判事が棄却。ユガ・ラボ、オープンシーの主張が認められる

米ネバダ州で、ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(Bored Ape Yacht Club)の親会社であるユガ・ラボ(Yuga Labs)、および大手NFT取引プラットフォームのオープンシー(OpenSea)ルックスレア(LooksRare)がNFT盗難防止のセキュリティ対策を怠ったとして起こされた訴えが棄却された。

ボアード・エイプ(Boared Ape)#8398 Photo: OpenSea

訴訟を起こしていたのは、2021年11月と2022年1月に3点のボアード・エイプ・ヨット・クラブ(以下、BAYC)のNFTを購入したロバート・アルミホだ。

彼は2022年2月1日、所有するNFTの1点を売却する意志をチャットアプリのDiscordで表明した。すると、購入したいという人物からコンタクトがあり、取引のためのリンクが送られてきたのでアルミホはそれをクリック。しかしそれはフィッシングサイトで、ハッカーはまんまとアルミホのイーサリアムウォレットにアクセスし、3点のNFTを盗んだうえオープンシー(OpenSea)ルックスレア(LooksRare)で転売した。

2022年4月に行われた提訴の訴状には、オープンシーとルックスレアが「詐欺や盗品転売の可能性を予見できたのにもかかわらず、それを防止するための常識的かつ合理的なセキュリティ対策を実施しなかった」とするアルミホの弁護士の主張が記されている。

この提訴では、ユガ・ラボ(Yuga Labs)が「盗まれたBAYCのNFTへのアクセス権を持つ人物がBAYCのコミュニティに入れなくすることで、同社が独占的に所有するコミュニティの監視を行う」ことを怠ったとされていた。しかしネバダ州のMiranda M. Du判事は、被告とされたユガ・ラボなどにそれぞれの理由を付して、訴えを棄却している。

ユガ・ラボは、同社がデラウェア州で設立され、ネバダ州には従業員がいないことから、同社に関する限りこの訴訟は無意味であると主張していた。一方、アルミホの弁護士は、ユガ・ラボはネバダ州で頻繁に取引を行っているので同州で裁判にかけることができると反論を試みたが、Du判事は同意せず、「ユガ・ラボの商品の購入者や会員がネバダ州に住んでいるだけでは、同社がネバダ州に本拠を置くとは言えない」とした。

また、Du判事はオープンシーの主張も認めている。アルミホの弁護士は、オープンシーには所有者確認プロセスや盗難の報告に迅速に対応するシステムがないことが過失に当たるとしていた。実際、アルミホはNFTの盗難に気づいてすぐオープンシーに連絡したが、同社のプラットフォーム上で転売されるまで何の反応もなかったという。以前、オープンシーには所有者確認プロセスがあったが、2021年3月に廃止されている。

Du判事は、過失の結果として生じた損害の救済を求めることができるのは、身体や財産に物理的な損害が生じた場合のみであり、純粋な経済的損失は過失請求の対象にはならないとした。しかし、今回ルックスレアに関する言及がない理由は不明だ。訴訟一覧には、2022年3月以降、ルックスレア側を反訴の原告とする記述はない。

US版ARTnewsは、オープンシー、ユガ・ラボ、およびアルミホの弁護士にコメントを求めたが、回答は得られていない。(翻訳:石井佳子)

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