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ローマのパンテオン神殿が有料化。入場券販売では混乱や苦情も

ローマで最も有名な観光名所の1つ、パンテオン神殿で5ユーロ(約800円)の入場料徴収が始まった。約2000年の歴史を持ち、ルネサンス期の巨匠ラファエロが埋葬されているパンテオンは観光客に絶大な人気を誇る。

大勢の観光客で賑わうパンテオン。Photo: Raul Moreno/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

今年3月、イタリアのジェンナーロ・サンジュリアーノ文化相は、入場券導入の発表にあたり、貴重な古代ローマの建築物であるパンテオン神殿の維持を目的として低額の料金を徴収することは、「常識に基づいた決定」であると説明していた。

しかし、入場券販売のルールは、常識にかなっているとは言い切れないようだ。現地を訪れた観光客からは、入場券の販売窓口や購入方法に関する情報が錯綜し、夏のうだるような日差しの中、パンテオン前に長い列ができているとの声が相次いでいる。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、パンテオンの公式サイトで10ユーロのオーディオガイドツアーのチケットを予約したが、そこに入場料は含まれておらず、入場券は別の文化省のサイトか現地でしか購入できないことを後で知ったという苦情も出ているという。また、オンライン予約サイトでは、一部の国のクレジットカードが使用できない。

今回導入されたシステムは、入場券が闇市場に流れるという別の問題を引き起こす可能性も指摘されている。やはりローマの定番観光スポットであるコロッセオでは、ツアー企画会社や旅行代理店が発売と同時に入場券を買い占めて売り切れを招き、パッケージツアーに組み込んで通常の入場料での見学を妨害しているとの批判が出ている。パンテオンでもこれと同じ状況になるリスクがあるのだ。コロッセオ考古学公園のディレクター、アルフォンシーナ・ルッソは、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に、2022年に入場券販売システムについてイタリア警察に苦情を申し立てたと話している。

イタリア文化省によると、パンテオンと同様の入場券販売システムは、今後数カ月のうちにイタリア国内の他の観光名所や博物館にも導入される計画だ。一方、サンジュリアーノ文化相は声明で、政府と文化遺産の管理当局は、入場券の入手方法の改善や高額転売を防ぐための対策を講じていると説明した。(翻訳:清水玲奈)

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