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3万人のアーティストの作品を月に送る「ルナー・コーデックス」が本格始動! 同様のプロジェクトとしては世界最大級

この秋、世界157カ国、3万人のアーティストによる作品を収録したメモリーカードが無人ロケットに乗せられて月に向かう。

月面に立つアポロ17号の宇宙飛行士。Photo: HUM IMAGES/UNIVERSAL IMAGES GROUP VIA GETTY IMAGES

7月27日にニューヨーク・タイムズ紙が報じたところによると、この「ルナー・コーデックス」は、カナダの物理学者で作家のサミュエル・ペラルタが始めたプロジェクト。世界中のアーティスト、作家、ミュージシャン、映画制作者による現代アート、詩、雑誌、音楽、映画、ポッドキャスト、書籍などをデジタル化し、月に送る活動をしている。

トロントを拠点とするメディア・テクノロジー企業、インカンデンスのエグゼクティブ・チェアマンでもあるペラルタは、作家たちと連絡を取り、作品をルナ―・コーデックスに無料で収録するための許可を得てきた。また、過去に展覧会、カタログ、作品集に掲載された作品であることを条件に、アーティスト自身からの応募も受け付けた。

ルナー・コーデックスは、今回集まった世界157カ国、3万人のアーティストによる作品をデジタルメモリーカードにコピーし、4つのカプセルに収めた。約22×28センチの軽量なメディア・ストレージ・デバイスには、15万点のテキストや写真を入れることができる。

ペラルタはインタビューで、「これは、文化的な作品を宇宙へ打ち上げるプロジェクトとしては世界最大級のものです」と胸を張った。

人類による作品を月に送るプロジェクトは初めてではない。世界初の例としては、1969年、フォレスト・マイヤーズ、アンディ・ウォーホルクレス・オルデンバーグロバート・ラウシェンバーグ、デヴィッド・ノブロス、ジョン・チェンバレンのドローイングを小さなセラミックタイルに刻んでアポロ12号の宇宙船に取り付けた「ムーン・ミュージアム」がある。その後、1971年に、ベルギー人アーティスト、ポール・ファン・ヘイドンクのアルミニウム彫刻がアポロ15号のミッションの一環として月に残され、1977年には金属製の円盤に音声と映像を収めたNASAのタイムカプセル「ゴールデンレコード」がボイジャー探査機とともに宇宙に打ち上げられている。

最近では、ジェフ・クーンズ、サシャ・ジャフリ、シュー・ビンなどの現代アーティストたちが、自らの作品を宇宙へ送り出そうと試みている

アポロ計画と異なる点は、ルナー・コーデックスには女性の作品が含まれていることだ。代表的な例では、2022年4月にキーウから避難したウクライナの版画家オレシャ・ジュラエワのリノカットによる版画や、2021年にベネット賞を受賞したアヤナ・ロスの絵画《ニュー・アメリカン・ゴシック》(2020)、アレックス・コルヴィルのセリグラフ《ニュー・ムーン》(1980)がある。

2022年11月、NASAが進める有人宇宙船プログラム、オリオン・ミッションで、ルナ―・コーデックスが月を周回し帰還した。2023年の秋から様々なミッションでカプセルが宇宙に送られる予定だ。(翻訳:編集部)

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