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海中に沈んだ富裕層の別荘跡? ヴェネツィアの潟から古代ローマの宝石が出土

イタリア・ヴェネツィアの北西にあるリオ・ピッコロで、神話上の人物が刻まれた古代ローマの宝石が見つかった。「ヴェネツィアとその潟」として世界文化遺産に登録されている場所で、こうした宝石が出土するのは非常にめずらしい。

イタリアのリオ・ピッコロで発見された宝石。人物の姿が彫られている。Photo: Courtesy the Ca' Foscari University of Venice

この宝石は、海中での発掘調査を行っているイタリア考古学研究者によって発見された。イタリア24プレスニュースが7月25日に報じたところによると、楕円形にカットされたメノウに、神話上の人物が彫られている。

このような遺物が海中から見つかるのは極めてまれなことで、宝石の質から裕福な古代ローマ人がこの地を訪れていたと推測されている。

「潟でこうした宝石が見つかるのは、とてもめずらしいことです。これまで、やはりヴェネツィアの潟にあるトルチェッロとバレーナ・デル・ヴィーニョで発見されたことがあるくらいです」と、発掘調査を指揮したヴェネツィア・カ・フォスカリ大学のカルロ・ベルトラーメは声明で述べている。

リオ・ピッコロでは、現在と同様、古代ローマ人も漁を行っていた。

調査では、レンガ造りの土台の上をオーク材の壁で囲った槽状の造作物が見つかっている。これは紀元1〜2世紀のもので、海面下3.4メートルほどのところにあった。当初、研究者たちは牡蠣の養殖に使われたと考えていたが、その後、食べる前に牡蠣を貯蔵しておく場所だということが分かった。

ベルトラーメはこう説明する。「この貯蔵槽と並行して、柱状の構造物の上にレンガが敷かれている。また、めずらしいフレスコ画のかけらや、白と黒のモザイク画のかけらもあった。1980年代にこの遺跡を発見したアマチュア考古学研究者のエルネスト・カナルは、ここを裕福な人物の別荘だったと考えている。これらの造作物は建造された年代がはっきりしているため、歴史的な海面上昇や地盤沈下を研究するうえで貴重な指標となるだろう」(翻訳:石井佳子)

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