マンモスの「完璧な化石」が見つかった採石場が立ち入り禁止に? 考古学者たちが立ち上がる
イギリスで、マンモスの群れの化石が発見された採石場の所有者が、発掘の続行を禁止した。今後、法的な保護がなければ化石の散逸や破壊の危機に陥ると、考古学者たちは警告している。
2021年、グロスターシャー州、コッツウォルズの砂利採石場で発掘作業を行っていた考古学者たちが、氷河期時代のマンモスの「極めて保存状態の良い」一群の化石を発見した。その中には子ども1頭と若者2頭が含まれている。広大な砂利採石場では、さらに多くのマンモスが発見されるものと期待されていたが、採石場の所有者が現場への立ち入りを禁止した。
この遺跡を最初に調査したのは、考古学者グループ、DigVenturesだ。化石を発見した当時、DigVenturesの共同設立者、リサ・ウェストコット・ウィルキンスはガーディアン紙にこう語っている。
「マンモスの化石は原始に近い状態でした。エキサイティングという言葉だけでは表現しきれません。イギリスでは、ほかでもマンモスの化石が発見されていますが、このような保存状態ではありません」
採石場の考古学的価値について、ウィルキンスは次のように説明する。
「発掘されたマンモスの化石は約22万年前のものです。これは非常に珍しく、イギリスとヨーロッパのネアンデルタール人の行動を理解する上で非常に重要です。なぜこの場所で多くのマンモスが死んだのでしょうか?ネアンデルタール人がマンモスを殺したのでしょうか?氷河期のイギリスで、ネアンデルタール人はどのような生活をしていたのでしょうか?この場所に残された様々な証拠は、これらの疑問を解決してくれるでしょう」
ガーディアン紙によると、採石場を所有するヒルズ・クオリー・プロダクツはDigVenturesにメールで、「現場への立ち入りはもうできない」と伝え、化石の返却を求めてきたという。イギリスには現場を保護し、発掘を継続させるための法律は現在無く、ヒルズ・クオリー・プロダクツは回収した化石を売却することさえできるのだ。
ウェストコット・ウィルキンズはこの問題を解決するため、5つの主要大学が参加する研究団体を設立した。ウィルキンズは、「複雑で難解な問題を解決し、正当に判断されるために必要なのは専門知識なのです」と話している。(翻訳:編集部)
from ARTnews