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  • 2023.08.25

今週末に見たいアートイベントTOP5: 森山大道、中平卓馬による史上初の2人展、西野達ら国内外20作家が新たな写真表現に挑む芸術祭

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. 挑発関係=中平卓馬×森山大道(神奈川県立近代美術館 葉山)

森山大道 《神奈川県 逗子市》1969年 © Daido Moriyama Photo Foundation

時にライバル、時に同志。互いに高め合った日本写真界の二大巨頭

ともに「アレ・ブレ・ボケ」と呼ばれる手法の代表的な写真家である、中平卓馬(1938-2015)と森山大道(1938-)。神奈川県・逗子に住んだ中平と森山を特集する史上初の2人展が、ご当地の神奈川県立近代美術館 葉山で開催されている。両者が同年生まれなのは、日本写真界におけるひとつの奇跡なのかもしれない。写真家の東松照明を介した出会いから、同じ舞台で切磋琢磨し、互いに意識し高め合った半世紀以上を、貴重な雑誌や写真集、本展のために新たに制作したプリントなどを通じて検証する。

1964年に出会った当時、中平は雑誌編集者、森山は駆け出しの写真家だった。その後は寺山修司の雑誌連載や、伝説的な写真同人誌「provoke」にそろって名を連ね、国内外に影響を与える作家へと成長していった。今展では、逗子や葉山をはじめとする神奈川県内で撮影した写真を中心に紹介。ヴィンテージプリントのほか、映像なども交えて、デビュー作から近年の制作までを概観する。

挑発関係=中平卓馬×森山大道
会期:7月15日(土)~ 9月24日(日)
会場:神奈川県立近代美術館 葉山(神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1)
時間:9:30 ~ 17:00 (入場は30分前まで)


2. 浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA

大自然を舞台に、苅部太郎、西野達らが挑む写真の新しい表現

避暑地として知られる、長野県御代田町で毎年開催される写真の芸術祭。今年は「イメージの実験場」というテーマのもと、国内外より20作家が参加。AIが生成する作品や、プリント技術の進化により実現した新たな表現方法に挑んだものなど、写真の可能性を感じさせる219点の作品を展示する。

大自然のロケーションを活かした屋外展示も見どころ。ダイナミックなスケールの作品やインスタレーションなど、写真の概念を超え、五感を使って楽しめる作品が並ぶ。展示作家は、クリスト&アンドリュー、ジュリー・コックバーン、アントニー・ケアンズ、ニコ・クリジノ、ハナ・ウィタカー、西野達、柿本ケンサク、苅部太郎、鈴木崇、リュウ・イカほか。

浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA
会期:7月15日(土)~ 9月3日(日)
会場:MMoP(長野県北佐久郡御代田町大字馬瀬口1794-1)
時間:10:00~17:00(入場は30分前まで)


3. 「小川信治展 Better Half 回帰の手法」(高松市美術館)

小川信治《ブランコの絶好のチャンス》 2013年(作家蔵)

精緻で心揺さぶられる表現の画家、小川信治の初期から最新作までを展覧

名画や映画から主要人物だけを抜き取り模写する「Without You」シリーズや、古い写真や絵葉書に描かれた観光名所や建物などを元に、同じモチーフを2つ並べて描く「Perfect World」シリーズなどで知られる画家、小川信治。その精緻な描写と感覚を揺さぶられる表現で見る者の心を掴んできた。

「回帰」をテーマにした本展では、画家として活動し始めた1980年代に描かれた作品から最新作まで、油彩、アクリル、鉛筆、インク、映像など様々な技法で制作された36点を展示する。図書コーナーでは学生時代の愛読書を紹介するほか、高松丸亀町商店街内にあるブランチギャラリーでは、このスペースのために描かれた新作を公開する。

「小川信治展 Better Half 回帰の手法」
会期:7月15日(土)~ 9月18日(月・祝)
会場:高松市美術館(香川県高松市紺屋町10番地4)
時間:9:30 ~ 17:00  (金・土曜は19:00まで、入場は30分前まで)


4. 奥天昌樹×小左誠一郎「点景」(gallery10[TOH])

(写真左)奥天昌樹《putona#34》、(同右)小左誠一郎《回覧 ”Judge in Circles”》

2人の抽象画家がストイックに追い求めた「点景」

ストイックなアプローチで抽象絵画を追求する、共に1985年生まれの奥天昌樹と小左誠一郎による2人展。絵画制作について、奥天はボードゲームのプロセスに例え、「一手一手完成に向かっていく様に絵の具を置いていく」と言い、小左も、「一対一の試合的な動静」と表現する。

本展の展示タイトル「点景」は、緑の風景に赤い人物や家などのアクセントを描くなど、風景全体の質を向上させるための点的な構成物を指す。それぞれに探求・解釈し描かれた「点景」はどのような響きを生み出すのか、会場で確かめてもらいたい。

奥天昌樹×小左誠一郎「点景」
会期:8月12日(土)~ 9月3日(日)
会場:gallery10[TOH](東京都渋谷区千駄ケ谷5-20-11 第一シルバービル)
時間:13:00 ~ 20:00 


5. AKI INOMATA 「昨日の空を思い出す」(MAHO KUBOTA GALLERY)

AKI INOMATA  Thinking of Yesterday’s Sky 2022- Photo : Asaoka Eisuke ©AKI INOMATA / MAHO KUBOTA GALLERY

前日の空をグラスの中で再現する、新プロジェクトを発表

生物との共同作業のプロセスを作品にするなど、ユニークな着想の作品制作で知られるAKI INOMATA。本展では、2020年から取り組んでいる、液体を入れたグラスの中に3Dプリント技術を用いて前日の空の様子を再現するプロジェクトを発表する。

このアイデアは、コロナ渦による行動制限の中で、自身の部屋から空を見つめた時間がきっかけとなった。日常が大きく変わり、過去の日常が異質なものとして感じられるようになったとき、「昨日と同じ今日は来ない」という思いに駆られたのだという。作品に加え、プロジェクトのプロセスを記録した映像や写真も展示される。展示を通して、絶え間なく流れる時間の中での「今」や、過去と現在、時間との関係性について考えさせられるだろう。

AKI INOMATA 「昨日の空を思い出す」
会期:8月25・26日、8月29日~9月2日、9月12日~16日
会場:MAHO KUBOTA GALLERY(東京都渋谷区神宮前2-4-7)
時間:14:00 ~ 19:00

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