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バンクシー作品が2万円で買える!? 《バレンタイン・マスカラ》の共同保有権が販売開始

バンクシーが2023年2月14日に発表した作品《バレンタイン・マスカラ》の共同保有権がロンドンのギャラリーから1口153ドル(約2万2000円)で販売される。

ドリームランド・マーゲイトに展示されている、バンクシー《バレンタイン・マスカラ》。Photo: Jim Dyson/Getty Images

《バレンタイン・マスカラ》は、イギリスの都市マーゲイトにある民家の壁に描かれた。1950年代風の鮮やかなブルーのドレスにエプロンを身に着けた女性の目は腫れ上がり、歯が折れている。彼女は虐待をした男性パートナーを投げ飛ばしたようで、倒れた冷蔵庫から男性の脚が突き出している。

壁画の前に置かれた冷蔵庫とプラスチック製椅子は地元の地区評議会職員によって撤去され、物議を醸したが、その後、壁画自体は土地の所有者により切り出された。

この作品の共同保有権が、8月22日から、ロンドンを拠点とするレッド・エイト・ギャラリーズで合計2万7000口販売される。今回の販売に至った理由について、同ギャラリーのジュリアン・アッシャーCEOはITVニュースで、保護用のアクリル板の設置や24時間体制で作品を守るための警備員の人件費で費用が嵩んだことを挙げた。

ストリートアートに詳しいバンクローバー・ギャラリーのロビン・バートンによると、《バレンタイン・マスカラ》は764万ドル(約11億1000万円)の価値があるという。販売を手掛けるレッド・エイト・ギャラリーズのジュリアン・アッシャーCEOは、「現実的には、100万ポンド~150万ポンド(1億8500万円~2億8000万円)の間で販売できれば良いと思っています」と話す。

販売するにあたり障壁となったのは、著作権の問題だ。バンクシーインスタグラムでこの作品が本物であることを認めたが、彼の著作権を扱うスタジオ、ペスト・コントロールによる鑑定が受けられなかったのだ。アッシャーは、「鑑定書がないので、オークションハウスには出せませんでした」と語る。

これまでバンクシーとペストコントロールは、ごく少数の例外を除いて、その場から切り出された作品の販売を認めていない。しかし、バンクシーらが認めなかったとしても、2021年11月に電気店の壁から切り出された《Crowbar girl》は、個人におよそ240万ドル(約3億5000万円)で売却されている

アッシャーは、作品を壁から切り出すために専門家を雇い、総期間2カ月と費用約25万ドル(約3600万円)をかけたとアートニュースペーパーに語っている。《バレンタイン・マスカラ》は現在、地元の遊園地ドリームランド・マーゲイトで一般公開されている。少なくとも2年以上は展示される予定だ。

《バレンタイン・マスカラ》の売り上げの一部は、イギリスの家庭内暴力に関する慈善団体「Refuge」と「Oasis」に寄付されるという。(翻訳:編集部)

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