今週末に見たいアートイベントTOP5: 横尾忠則が新作102点を一挙公開、群馬を舞台に125組が参加する国際芸術祭
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. Group Show: 知覚 - Perception(Gallery 38)
国内外の3人の、「知覚」を意識させる肖像画やサウンドアート
「知覚」や「感覚」を作品の共通点とする、セシリア・アンドリュース(1969年チリ生まれ)、細井美裕(1993年生まれ)、オリバー・マースデン(1973年イギリス生まれ)による3人展。外界から刺激や情報を感じ取り、それに意味づけをする「知覚」は、作品制作や美術鑑賞にも大いに関わるもの。自分の知覚に意識をむけながら本展の作品を見れば、新しい発見がありそうだ。
パリで活動中のセシリア・アンドリュースは、5年前にフランスの代表的な百科事典の点字版をもらい受けたことから、“知覚の問題をめぐる芸術的考察”が生まれたという。今回は、感覚的な側面や喚起を取り入れた抽象的な肖像画を展示する。サウンドアーティストの細井美裕は、自身の声など様々な音の素材を用い、見る者に空間を意識させる作品を制作する作家。本展では、作品の前を歩きながら鑑賞する《Fixation 5》を東京で初公開する。歩くスピードや位置によって音が変わるため、鑑賞者は立ち止まったり近づいたりして作品に関与していく。音やエネルギー、重力などの目に見えない物理的な力に目を向けるオリバー・マースデンは、さまざまな素材を使った鮮やかな光を放つフォルムの作品を披露する。
Group Show: 知覚 – Perception
会期:8月31日(木)~ 10月1日(日)
会場:Gallery 38(東京都渋谷区神宮前2-30-28)
時間:12:00 ~ 19:00
2. 青山ひろゆき ―多添加―(最上川美術館)
独自の世界観で描く、災厄の先にある希望
第一線で活躍中のアーティストを紹介する企画展の第5回は、1977年生まれの青山ひろゆきを特集する。青山は東北芸術工科大学の教授であり、国内外での絵画やインスタレーションの発表、展覧会のキュレーションと、多方面で精力的に活動する作家だ。独自の世界観をカラフルな色彩で描いた油彩の近作を中心に、150号の新作なども展示する。
ある作品ではリスがどんぐりのように銃弾をくわえ、またある作品ではフルーツの代わりに花で埋め尽くされたパフェの周りを金魚が泳ぐ。描かれた不思議な情景には、現代社会へのさまざまなメッセージが込められているという。東日本大震災以降に私たちが経験してきた多くの災厄や悲劇……。青山は「これまでの生き方や日常に、目には見えない多くの新しい感情が添加され、歪でもなんとか未来を導こうとする思いを絵画によって表現しました」と話している。
青山ひろゆき ―多添加―
会期:9月8日(金)~ 10月10日(火)
会場:最上川美術館(山形県村山市大字大淀1084-1)
時間:9:00 ~ 17:00 (入場は30分前まで)
3. 中之条ビエンナーレ2023(イサマムラ・旧伊参小学校ほか、群馬県中之条町内44カ所)
125組が参加する、山村を舞台にしたアートの祭典
群馬県北西部の山村地域・中之条町で隔年開催される国際現代芸術祭。国内外の125組のアーティストが、「中之条市街地」「伊参」「四万温泉」「沢渡暮坂」「六合」の5エリアにある44会場で、展示やパフォーマンスを行う。9回目を迎える今回のテーマは、16世紀に書かれた地誌の名から採用した「Cosmographia(コスモグラフィア) 」。想像を加えて描かれた当時の世界地図のように、今では見えない土地の記憶を作品として可視化することを題にした。作家たちは、昭和の風情が残る商店街の空き店舗や、養蚕農家だった古民家、温泉街などを舞台に滞在制作し、その場所ならではの作品を作り上げた。
広い展示空間を活用した、規模の大きい作品が多いのが特徴だ。元材木問屋の歴史的建造物「やませ」(伊参エリア)では、彫刻家の西島雄志がインスタレーションを展開する。クルクルと巻いた銅線をいくつもつなげて形作った2体の鹿のオブジェを中心に、空間全体をつなげた。同会場の別室では、早崎真奈美もインスタレーションを披露する。地域に根付くマメ科の樹木・サイカチをモチーフに選び、鋭いトゲを持つことから鬼門除けに植えられたという文化に注目。紙から切り出したサイカチのイメージを、建物の鬼門となる位置に展示した。
ほかに、いくらまりえ、大貫仁美、大野光一、久木田茜、白矢幸司、曾超、春田美咲、藤森哲らが参加。ワークショップも各所で開催される。
中之条ビエンナーレ2023
会期:9月9日(土)~ 10月9日(月)
会場:イサマムラ・旧伊参小学校(群馬県中之条町五反田3534-4)ほか、群馬県中之条町内44カ所
時間:9:30 ~ 17:00
4. 「横尾忠則 寒山百得」展(東京国立博物館 表慶館)
寒山拾得を自由に解釈した、めくるめく横尾ワールド
古来、中国や日本で伝統的な画題として描かれてきた「寒山拾得」を、現代美術家の横尾忠則が独自に解釈して再構築した全102点の新作シリーズを一挙初公開する。寒山拾得とは、中国・唐時代に生きた伝説的な詩僧の寒山と拾得のこと。詩に興じる高い教養を持つ文人でありながら、洞窟の中に住んだり残飯で腹を満たしたりした脱俗的な二人の振る舞いに、後世の知識人たちは憧憬の念を抱いてきた。その奇行ぶりは、悟りの境地の「風狂」として、中国の禅宗でも重要視されてきたという。
横尾もコロナ禍に、寒山と拾得のごとく俗世から離れたアトリエで制作に没頭。1年間で102点もの作品を一気呵成に描き上げた。何かにとらわれることもなく、自由な精神の下で色彩豊かに表現された寒山拾得は、 “横尾ワールド”が全開だ。作品に特定のメッセージを込めず、心に湧き出る形象をキャンバスに定着させていったのだという。11月5日(日)まで、関連企画として本館特別1室で特集「東京国立博物館の寒山拾得図―伝説の風狂僧への憧れ―」を開催。国宝や重文など、日中で描かれた「寒山拾得図」を一堂に集める(展示替えあり)。
「横尾忠則 寒山百得」展
会期:9月12日(火)~ 12月3日(日)
会場:東京国立博物館 表慶館(東京都台東区上野公園13-9)
時間:9:30 ~ 17:00 (入場は30分前まで)
5. 宮島達男「Life Face on Gold」(Akio Nagasawa Gallery Ginza)
宮島達男の新境地。ドローイングパフォーマンスも実施
1から9までの数字が明滅するLEDのデジタルカウンターを用いたインスタレーションで世界に知られる、コンセプチュアル・アーティストの宮島達男。「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」の3つのコンセプトを貫き続けながら、近年では制作過程の行為を作品の要素に色濃く含んだペインティングやドローイングも多く手掛けている。今展では、金箔に凹凸のエンボスが施されたペインティングなどを発表する。
会場には、数字を使って命の循環を表現してきたこれまでの作品同様、死を意味する0(ゼロ)を除いた数字を並べて描いた作品群が登場。パフォーマンスアーティストを出発点とする宮島の“パフォーマンスの痕跡”としての絵画が並び、LED作品とは異なるアプローチから作家を理解することができる。9月30日(土)の15:00から 、宮島によるドローイングパフォーマンスがある。
宮島達男「Life Face on Gold」
会期:9月15日(金)~ 12月23日(土)
会場:Akio Nagasawa Gallery Ginza(東京都中央区銀座4-9-5 銀昭ビル6F)
時間:11:00 ~ 19:00 (土曜の13:00~14:00は一時休廊)