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今週末に見たいアートイベントTOP5: 60組の作品から「生きることの美しさ」を感受、宮島達男、江上越ら36点が集結したコレクター展

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー(金沢21世紀美術館)より、オトボン・ンカンガ 《アンアースド ‒ サンライト(見出された ‒ 陽光)》2021 作家蔵 Photograph: Markus Tretter © Otobong Nkanga

1. ダニエル・デイヴィッド・フリーマン 「キャラクター・ビルディング」(エースホテル京都)

展示風景。Photo: Shinsuke Matsukawa

ロンドンのアーティストが京都で表現する緻密な世界

ロンドンを拠点に活動するアーティスト、ダニエル・デイヴィッド・フリーマンの個展。本展で展示される新作《Character Building(キャラクター・ビルディング)》は、東京のギャラリーアートブック出版社communeとの共同キュレーションによるアーティスト・イン・レジデンス中に制作された。

石墨と色鉛筆で描かれた緻密なドローイングは、抽象的な漫画のようなイメージを持ち、ハイカルチャーとローカルチャーのあらゆる分野に対する美の意味と重要性を問いかけるコラージュとして表現されている。

ダニエル・デイヴィッド・フリーマン 「キャラクター・ビルディング」
会期:9月6日(金)〜12月12日(木)
場所:エースホテル京都(京都府京都市中京区車屋町245-2)
時間:12:00 〜 24:00
休館日:無休


2. T2 Collection「Collecting? Connecting?」展(WHAT MUSEUM)

江上 越「にじいろ―Kusano Takafumi」2021年
©Etsu Egami

コレクター史を彩る象徴的な36点が集結

コレクターの高橋隆史が約6年前から収集してきた現代アートのコレクションを紹介する。起業家である高橋は、コンセプトやビジョンを世界に問うという点で作家と起業家の共通する側面を見出し、若手作家をはじめ、作家が新たな挑戦として制作した作品のコレクションに力を入れている。本展では、アートコレクターとして最初に購入したベルナール・フリズの作品をはじめ、宮島達男名和晃平、和田礼治郎など、近年惹かれているコンセプチュアルな作品を中心に約36点を展示している。昨年金沢21世紀美術館で個展を開催したアレックス・ダ・コルテの映像作品《The Open Window》(2018)も必見。

今を生きる作家が自身のメッセージを多様な形で表現している現代アートに同じ時代を生きている私たちが向き合うことで、自分自身との繋がりや新たな視点を発見することができるだろう。

T2 Collection「Collecting? Connecting?」展
会期:10月4日(金)~2025年3月16日(日)
場所:WHAT MUSEUM(東京都品川区東品川 2-6-10)
時間:11:00〜18:00(入館は1時間前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始


3. すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー(金沢21世紀美術館)

ジャイダ・イズベル《ジャガーの懺悔》2021
個人蔵
Courtesy of Millan, São Paulo and Galeria Jaider Esbell de Arte Indígena Contemporânea.
Photo: Filipe Berndt
© Jaider Esbell Estate

ダンスを踊るように軽やかに「生きることの美しさ」を感受

金沢21世紀美術館の開館20周年を記念し、年間テーマ「新しいエコロジー」に基づいたテーマで制作するアーティストの作品を展示する。辺境を含めたアフリカ、南アメリカ、アジア、欧米の10以上の国と地域から60組の芸術家、クリエイターが集い、美術館空間の中でお互いにダンスを踊るように、生きることの美しさを感受するための知恵と生命を分かち合う。

さらに本展では、同じヴィジョンを共有する科学者や哲学者などの研究者とも協働し、専門的な調査結果や理論を視覚化、可感化することで、感覚を通した学び(Sensory Learning)として伝える。

すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー
会期:11月2日(土)〜2025年3月16日(日)
場所:金沢21世紀美術館(石川県金沢市広坂1-2-1)
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:月曜(祝日は翌平日、12月29日〜 1月1日)


4. 井村一登 commission work(Kanda & Oliveira)

《window-ordered from "opticalverse"》(2024)

井村一登が提示する、鏡への「手数料」

アーティストの井村一登は、人と鏡の関係性の歴史を探究する作品を、多角的なリサーチに基づいて制作している。本展ではギャラリーの全フロアを使い、東京・浜松町の世界貿易センタービル解体現場の瓦礫を素材に制作したや写真、映像から複合的に、反射率と「手数料=commission」をテーマにインスタレーションを展開する。

私たちが日常的に使っている洗面台のガラスミラーは反射率が約90%で、10%ほど再現性を欠いているという。世界貿易センタービルの解体現場で貰い受けたガラスを手にした井村は、貿易における手数料のように、鏡を見るものが自身を再現するために支払っている「手数料」なのではないかという考えから生まれた井村の世界観を存分に見ることができる。

井村一登 commission work
会期:11月16日(土)〜12月21(土)
場所:Kanda & Oliveira(千葉県船橋市西船1-1-16-2)
時間: 13:00 〜19:00
休館日:日月火


5. サエボーグ 「Enchanted Animals」(黒部市美術館)

「Cycle of L」公演風景(高知県立美術館、2020) 撮影:釣井泰輔

鑑賞者が共に創出する「農場の世界」

アーティストのサエボーグは、ラテックス製のボディースーツで自身の身体を拡張させて家畜等のキャラクターに扮しパフォーマンスを行っている。本展は、代表作である《Slaughterhouse(スローターハウス)》、《Pigpen(ピッグペン)》、《Pootopia(プートピア)》という、農場が舞台の中心となる作品で構成される。

そしてそこに、《Enchanted Animals(エンチャンテッド・アニマルズ、魔法にかかった動物たち)》による新たな世界が立ち上げられる。鑑賞者は、動物たちの耳や尻尾などを身に付けて家畜に扮して演じることによって、他者と共に生きる自らの価値観や生き方がつくり直されていくような一つの世界を創出する。

サエボーグ「Enchanted Animals」
会期:11月16日(土)〜2025年1月13日(月祝)
場所:黒部市美術館(富山県黒部市堀切1035)
時間:9:30〜16:30(入館は30分前まで)
休館日:月曜(祝日は除く、12月29日~1月3日)

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