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頭部のない古代ローマのブロンズ像を密輸品疑いで押収。トルコは「略奪品」と主張

トルコから密輸されたとされる、オハイオ州のクリーブランド美術館所蔵のブロンズ像がニューヨーク当局に押収された。

撤去されたクリーブランド美術館のブロンズ像。Photo: Courtesy of The Cleveland Museum of Art

ニューヨーク当局に押収された、頭部が欠損したローブを着た男の像は、高さ76インチ(約193センチ)で、紀元前150年から紀元後200年の間に制作されたと考えられている。AP通信によると、この像はニューヨークを経由して密輸され、1986年にクリーブランド美術館が購入。現在は2000万ドル(約2億9000万円)の価値があるという。

8月14日、ニューヨーク郡最高裁判所のルース・ピックホルツ判事は、マンハッタン地方検事局が同群に持ち込まれた略奪品に関する大規模な捜査の一環として、押収の令状に署名した。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、この彫像は偉大なローマ皇帝マルクス・アウレリウスがモデルであると考えられており、クリーブランド美術館の「古代ギリシャローマ展示室の誇り」であったという。

地元紙プレイン・ディーラーが最初に報じたところによると、この彫像は2カ月以上前に美術館の一般公開から外され、同館のウェブサイトでは《哲学者としての皇帝、おそらくマルクス・アウレリウス(在位AD161-180)》とされていたものが、《ドレープをまとった男性像》に変更されていた。この彫像に関する記述の変更について、クリーブランド美術館の広報担当者トッド・メセックは、「この彫像の歴史的解釈に変更はありません。以前記載したものは、参考のために残しています」と話す。

同紙によると、トルコは2012年、クリーブランド美術館が所蔵する22点は同国から略奪されたものだと主張し、略奪品のリストを公表。そこには、この像についての言及もあった

メセックはUS版ARTnewsの取材に対して、「同館は、この像の出所に関する問題を非常に深刻に受け止めており、トルコ側の主張を慎重かつ責任を持って検討している」と述べた。また同館は、「解決に至る前に公の場で議論することは、関係者すべてにとって最良の結果をもたらすための、自由で開かれた対話の妨げになると考えています」とも話している。(翻訳:編集部)

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