暗号資産で支払いが“できる”、“できない” メガギャラリー
3月29日、メガギャラリーのガゴシアンは、ビットコイン、イーサリアム、そしてUSDコインの3つの暗号資産(仮想通貨)での支払いを受け付けることを公表した。
このニュースは、村上隆の個展開催発表の中で明らかにされた。今回の展覧会(5月11日〜6月25日)では、村上が手がける2つのNFTプロジェクトに基づく彫刻と絵画が展示される。
プロジェクトの一つは、RTFKT(アーティファクト:米国のNFTファッションブランド)と共同で制作した「CloneX(クローンX)」。もう一つは村上の単独プロジェクトで、村上作品でおなじみの花をドットで表現した1万1000点以上のNFTシリーズ「Murakami.Flowers」だ。
ガゴシアンは長い間、暗号資産やNFTには消極的と見られていた。所属アーティストだったウルス・フィッシャーが、NFTプロジェクトを立ち上げるために、やはりメガギャラリーのペースに移ったこともあり、ガゴシアンの方針転換は予想外のものだ。しかし、実際のところ、暗号資産の導入をためらうギャラリーはめずらしくない。
クリスティーズやサザビーズのようなオークションハウスが、早くから暗号資産での支払いを受け付け始めたのに対し、この新しい決済方法の採用に踏み切る動きを見せた大手ギャラリーはまだ少ない。
暗号資産に関するメガギャラリーの現状は以下の通り。
- ペース:暗号資産での支払いやNFTを扱うことに最も積極的なギャラリー。いち早く独自のNFTプラットフォームPace Verso(ペース・バーソ)を立ち上げ、メタバースにおけるアーティストの活動を支援している。
- リーマン・モーピン:2021年7月から暗号資産での支払い受け付けを始めており、この決済方法を導入した最初のギャラリーだと標榜している。
- タデウス・ロパック、デビッド・ツヴィルナー、ハウザー&ワース、ホワイト・キューブ:まだ暗号資産での支払いを受け付けていない。
リーマン・モーピンの暗号資産決済システムの開発に携わったローラ・リーマンは、暗号資産を導入していないギャラリーも、そう遠くないうちに方針を変えざるを得なくなるだろうと述べる。「暗号資産の制度整備が進むにつれ、マスターカードのような既存企業と暗号資産取引所の提携が始まり、ギャラリーは知らないうちに暗号資産を受け付けているようになるかもしれない」
また、顧客からの要望で舵(かじ)を切ることもあり得る。リーマン・モーピンが導入を決めたのも、特にアジアの顧客が暗号資産での決済を頻繁に要求するようになったためだ。アジア市場の重要性が高まり、IT業界に富の源泉があることから、今後は新しい通貨を受け入れるギャラリーが増えていくかもしれない。(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月1日に掲載されました。元記事はこちら。
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