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クリストとジャンヌ=クロードによる《Arc de Triomphe, Wrapped(包まれた凱旋門)》の素材が、2024年パリ・オリンピックのテントに!

パリ市は、クリストとジャンヌ=クロードの《Arc de Triomphe, Wrapped(包まれた凱旋門)》(1961-2021)で用いられた素材を、2024年のオリンピックとパラリンピックのためにリサイクルすることを発表した。

2021年に約2週間限定で公開された《Arc de Triomphe, Wrapped(包まれた凱旋門)》(1961-2021) Photo: FRÉDÉRIC SOLTAN/CORBIS VIA GETTY IMAGES

《Arc de Triomphe, Wrapped(包まれた凱旋門)》(1961-2021)は、クリストとジャンヌ=クロードが1961年から構想してきた壮大なインスタレーションだ。パリ市は、本作で凱旋門を包むために使われた約25000平方メートルのポリプロピレン生地と3000メートルの赤いポリプロピレンのロープを、2024年のオリンピックとパラリンピックの日除けやテントなどに再利用することを発表した。このリサイクルプロジェクトを先導しているのは、これまでアディダスほか数々のブランドとタッグを組み、リサイクルした海洋廃棄プラスティックを用いた商品を手掛けてきた環境保護団体のParley for the Oceans。

パリ市長のアンヌ・ヒルダゴは声明の中で、「これは、気候変動への芸術界の対応力を示す非常に素晴らしい例となるでしょう」と語っている。

この作品の木材と鋼鉄製の下部構造は、それぞれ大工組合のレ・シャルパンティエ・ド・パリ、鉄鋼メーカーのアルセロール・ミッタルとデリシュブール・エンバイロメントによって、すでに再利用されている。

Parley for Oceansの創設者兼CEOのシリル・ガッチは、このプロジェクトが「有害で有毒な搾取的なビジネス慣行が過去の遺物となった新しい経済」を反映していると話している。

クリストとジャンヌ=クロードによるこの作品は、歴史的な建造物を巻き込んだラディカルな創造性を提示したと言える。本作は、最初の構想から約60年の月日を経て実現された。当初は2020年4月の完成を目指していたが、新型コロナウィルスのパンデミックによって2021年9月に延期されることとなった。2009年11月18日に妻ジャンヌ=クロードに先立たれたクリストは、その完成を目にすることなく2020年5月31日に亡くなっている。

クリストとジャンヌ=クロードの作品は、しばしば、解体され、リサイクルされることを意図して制作されてきた。例えば、イタリアのイゼオ湖に黄色の布で包まれた浮桟橋を出現させた《The Floating Piers(浮桟橋)》(2014-16年)は、後にドイツのリサイクル会社アルテックスによって加工され、ニードルフェルトや乗馬リングの材料となった。

クリストとジャンヌ=クロードのスタジオは、現在、1977年に構想されたイスラム建築をモチーフにした作品《The Mastaba》を制作中で、アブダビで公開されることになっている。完成次第、この作品は体積で世界最大の現代彫刻になると予想されている。

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