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《モナリザ》に新たな研究成果。実験好きのダ・ヴィンチが挑んだ新手法とは?

世界で最も有名で、最も研究されている絵画、レオナルド・ダ・ヴィンチモナリザ》。10月11日、アメリカの科学雑誌Journal of American Chemical Societyに新たな研究成果が発表された。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナリザ》(1503–1516)ルーブル美術館蔵。Photo: Wikimedia Commons

著名な研究機関であるフランス国立科学研究センター(CNRS)の科学者たちは、美術史家と協力して研究プロジェクトを開始した。X線を使って《モナリザ》の下層から採取した絵の具の破片の化学構造を調査した結果、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)がこの絵画の制作中に、実験的に新しい手法を試していた可能性を示した。

Journal of American Chemical Societyに発表された論文によると、ダ・ヴィンチが《モナリザ》の下地に使用した油絵の具の化学組成は、彼の他の作品や、同時代の著名な画家の作品に使われていたものとは異なっていたという。

下地には、プラムボナクライトという希少な鉛化合物が使われていた。これは、ダ・ヴィンチが《モナリザ》の絵の具の層を厚くし、乾燥を早めるために酸化鉛の粉末を使用したという、美術史家の間で長年信じられてきた説を裏付けるものだ。

この研究の筆頭著者で、CNRSの化学者であるビクター・ゴンザレスはAP通信の取材に対して、「彼は実験が好きな人で、彼の絵画はどれも技術的にまったく異なっています。《モナリザ》の絵の具の層からは、確かに特別な技法があることが分かって興味深いです」と語っている。

しかし、研究は簡単なものでは無かった。絵の具の破片は髪の毛1本の直径よりも小さく、肉眼ではほとんど見えないものだったからだ。科学者たちは、シンクロトロン(荷電粒子を光速近くまで磁気で加速する装置)を利用したX線を用いたことで、ようやくプラムボナクライトを見つけ出した。

今回の発見は珍しいことではあるが、オールドマスターの作品からプラムボナクライトが検出されたのは初めてではない。ゴンザレスと彼のチームは、過去にレンブラント(1606-1669)の絵画からも見つけており、これは、何世紀にもわたって、同じ、あるいは非常によく似た絵の具のレシピが受け継がれてきたことを示唆している。

ゴンザレスは今回の成果について、「まだまだ発見すべきことはたくさんあります。まだ表面しか見ていないのです。この発見も、ほんの少し知識を深めただけに過ぎません」とコメントしている。(翻訳:編集部)

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