ポンピドゥー・センターの大規模改修にサウジアラビアが80億円を拠出。深化する両国の文化協力
420億円近くの資金を投じて行われるパリのポンピドゥー・センター改修に、サウジアラビアが約80億円を拠出することが発表された。この資金は、両国文化関係者の数年にわたる協力関係の一環として設立されたヘリテージファンドの一部に位置付けられている。
フランスを代表する近現代美術館を擁するポンピドゥー・センターは、2025年から2030年にかけて展示スペースの大改修のため閉鎖される(その間、所蔵品は外部施設で展示される予定)。
この大規模改修に必要となる2億6200万ユーロ(約420億円)もの費用への支援として、サウジアラビアが5000万ユーロ(約80億円)の拠出を行うことになった。資金提供の発表は、12月初旬、フランスのラシダ・ダティ文化相とサウジアラビアの文化大臣を務めるバドル・ビン・アブドラ・ビン・ファルハン・アルサウド王子によって行われた。
資金援助は、フランスとサウジアラビアの広範なパートナーシップの一環として合意された10項目に含まれるもので、両文化相は考古学や映画、写真などのプロジェクトに関連する9つの文化協力に関する合意も明らかにしている。
フランス側からは、サウジアラビアにおける博物館・美術館の設立や遺跡など歴史遺産に関するプロジェクトの開発支援が約されている。その一例が、アルルの国立写真高等専門学校のプログラムと連動したリヤドの新しい写真美術館だ。
そのほか、フランス文化財センター(Centre des Monuments Nationau)や文化遺産・不動産プロジェクト運営局(OPPIC)といったフランスの公的機関の協力で、王宮などサウジアラビアの歴史遺産を修復する計画もある。さらに両国は、フランス国立考古学研究所が支援するキディヤ地区のプロジェクトでも、歴史遺産保護における一層の協力を進めるとしている。
両国は2018年に、サウジアラビアの文化施設や遺跡に関するパートナーシップ契約を締結。サウジアラビアがメッカ巡礼などの宗教観光に限定していた方針を転換し、多数の古代遺跡が存在するアルウラへの観光を開放するきっかけとなった。アルウラ渓谷には、7000年前のものを含む約3万もの遺跡が点在するため、アラビア半島における文明の野外博物館とも言われる。
同プロジェクトは、サウジアラビアの「ビジョン2030」計画の一環として推進されているもので、主導的役割を果たしているのはフランスのアルウラ開発庁(Afalula: L'Agence Française pour le développement d'ALULA)。2016年に発表されたこの計画は、同国が人権問題を抱えているというイメージを塗り替え、産油以外の分野における経済発展、特に観光業を発展させることを目指している。(翻訳:石井佳子)
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