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ポンピドゥー・センターは「持続不可能」? 仏政府がそのビジネスモデルに警告

全面改修の追加予算334億円の調達に苦戦中のパリポンピドゥー・センター。フランスの会計検査院が実施した監査の報告書によれば、そのビジネスモデルは持続可能性に欠けることが明らかになった。2030年までかかる全面改装と、新たな保管庫建設が同館に深刻な財政負担を与えている状況だ。

ポンピドゥー・センター。Photo: Getty Images

フランスの会計検査院は4月23日、2013年から2022年までのポンピドゥー・センターの財政状況をまとめた報告書を発表し、同館と同館を管轄するフランス文化省に対して「厳重な警戒のメッセージ」を発した。

ポンピドゥー・センターは、現在、1970年代にレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースが手掛けた建物の全面改装に段階的に着手しており、2025年末から約5年間にわたり休館する計画だ。この改修プロジェクトにかかる費用3億5800万ユーロ(約597億円)は国費で賄われるが、遅延のために最低でも2億ユーロ(約334億円)の追加費用が発生すると見積もられている。同館は遅くとも2025年初めまでには、その全額を調達しなければならないが、現在のところ、そのうち3900万ユーロ(約65億円)しか集められていない。

さらに同館は、パリ郊外のエソンヌ県マシーに新たな保管・展示スペースを2026年のオープンを目指して建設中で、財政負担は増すばかりだ。検査院によれば、マシーのスペースは2億5400万ユーロ(約424億円)かかる見込みだったが、支出の過小評価とインフレにより、さらに1億4200万ユーロ(約237億円)が必要だという。

こうした同館の財政状況についてピエール・モスコビシ監査役会会長は、ル・モンド紙で「現在、ポンピドゥー・センターは、その開発・投資プロジェクトを自力で資金調達する手段を持っていない」と言及。確かに同館は、パリの主要美術館とは異なりチケット収入は頭打ちで、入場者数はパンデミック以前のレベルに戻っていない。2023年の入場者数は、オルセー美術館の510万人に対し262万人だった。監査院は、改修工事中は1500万ユーロ(約25億円)の損失と予想している。

一方、同館はこの10年の間に、12万点にも及ぶ膨大なコレクションのプロモーションを通じてその資源を多様化し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に次ぐ世界第二位の規模を誇る近現代美術館へと成長した。2023年にはサウジアラビアの美術館建設に協力、その長期的なパートナーシップを財源にしている。今後はスペインのマラガ、中国の上海に加え、アメリカのジャージーシティ、韓国のソウルにも分館を建設する予定だ。

ポンピドゥー・センターには戦略委員会があり、年に2回、文化省、予算局とともにさまざまなプロジェクトの棚卸しを行っている。

監査報告書は、同館と文化省に対して、国による財政的支援を維持するための生産的な対話を続けるよう勧告。さらに、経営陣の刷新と予算の最適化に注力することや、人件費を含む経費の管理を強化するよう促した。同館は過去に従業員のアウトソーシング化を試みたが、数カ月にわたるストライキを引き起こし失敗に終わっている。(翻訳:編集部)

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