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バスキアの稀少な大作を手にするのは誰!? 予想価格90億円の自画像が約24年の時を経てオークションへ

ジャン=ミシェル・バスキアの大作かつ高品質な自画像が、11月のサザビーズ・ニューヨークでのオークションに出品されることが発表された。

ジャン=ミシェル・バスキア《Self Portrait as a Heel(Part Two)》(1982)Photo: Courtesy Sotheby's.

1982年に制作された高さ8フィート(2メートル43センチ)の《Self Portrait as a Heel(Part Two)》は、11月15日に開催されるサザビーズのイブニング・オークションに出品され、4000万ドルから6000万ドル(約60億1500万円~約90億2300万円)の値がつくと予想されている。大作かつ高品質のバスキア作品がオークションに出る事は珍しく、これに匹敵する最後の出品は、2017年にサザビーズで1億1000万ドル(現在の為替で165億4100万円)という記録的な数字で落札された、同年制作の無題の頭蓋骨の絵である。

《Self Portrait as a Heel(Part Two)》は、この数字を上回ることはないだろうが、予想落札額内で落札されれば、バスキアの作品としては、これまでで最も高く評価された作品のひとつとなるだろう。 

サザビーズによれば、バスキアはヴェネチアにあるラリー・ガゴシアンの別荘に住んでいたときにこの自画像を描いた。そして制作直後に、バスキアの初期のパトロンだったベルギーのコレクター、ステファン・ヤンセンがガゴシアンから購入している。アートニュースペーパーによると、その後、2020年に閉鎖したロンドンのギャラリー、ブレイン・サザンに渡ったようだ。

サザビーズのスペシャリストは、《Self Portrait as a Heel(Part Two)》は、ロサンゼルスで比較的無名の新進アートスターであったバスキアのロサンゼルスでの経験を反映していると考えている。彼はこの多作な時期に、パンクや不良を意味する俗語である「ヒール(Heel)」という言葉を取り入れた3つの作品を制作した。プロレスにおいて「ヒール」とは、試合のヒーローに対する悪役や箔付け役のことだ。

サザビーズ・アメリカのコンテンポラリーアート部門責任者デビッド・ガルペリンは声明で、「バスキアの他の絵画が、彼自身への密かな言及を持つのとは異なり、この絵画は、彼が自分自身を理解するだけでなく、他者が必然的に自分をどう受け止めるかも意識して描いています」と述べている。

今回の作品と対をなす《Self Portrait as a Heel》は、2010年にニューヨーククリスティーズで手数料込み590万ドル(現在の為替で8億7000万円)で落札された。このシリーズ最後の作品《Hollywood Africans 》(1983)は、ホイットニー美術館の永久コレクションとなっている。

《Self Portrait as a Heel(Part Two)》が最後に公開されたのは1999年のクリスティーズでのオークションで、77万2000ドル(現在の為替で1億1600万円)で落札された。この作品は、11月1日からサザビーズ・ニューヨークのギャラリーで展示される。(翻訳:編集部)

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