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破壊への懸念からイラク地中に隠されたラマッス像を再発掘。2700年前の神像は「巨大かつほぼ無傷」

イラク北部の遺跡で、2700年前にさかのぼる古代アッシリアのラマッス像の胴体が再び掘り起こされた。この像は破壊を避けるため土に埋めて隠されていたものだが、その巨大さと保存状態の良さに研究者もあらためて驚いている。

治安部隊が警備を行う中、イラク北部のコルサバード遺跡で掘り起こされた新アッシリア帝国時代の古代神像。この場所はかつてドゥル・シャルキンと呼ばれ、紀元前8世紀後半に在位したサルゴン2世の宮殿があった。Photo: Zaid AL-OBEIDI / AFP) (Photo by ZAID AL-OBEIDI/AFP via Getty Images)

イラク国家考古遺産委員会(SBAH)は10月26日、2000年をはるかに超える年月を経たこのラマッス像が、頭部が欠けている以外ほぼ無傷であると発表した。ラマッスは人間の頭と雄牛の体、鳥の翼を持つ宮殿の守護神で、今回掘り起こされたアラバスター製の像は縦3.8メートル、横3.9メートル、重さ18トンという巨大なもの。

イラクとフランスの合同チームによって行われた掘り起こし作業について、フランスの考古学者パスカル・バタラン(パンテオン・ソルボンヌ大学中東考古学教授)は、ニュースチャンネルのフランス24にこう語った。

「こんな巨大なものを発掘したのは生まれて初めてです。(中略)通常、これほど大きな遺物が発見されるのは、エジプトかカンボジアに限られています」

SBAHの発表によると、このラマッス像は新アッシリア帝国のサルゴン2世が紀元前721年に権力を握った後、新しい首都コルサバードを守るために建造されたもの。しかし、サルゴン2世の息子の死後に首都は移転し、残されたラマッス像は土砂に埋もれていった。

その存在は19世紀のフランス人考古学者によって報告されてはいたが、1992年のイラクによる調査で見つかるまで公的な記録は残っていなかった。しかし当時のイラクは、1990年のサダム・フセインによるクウェート侵攻で厳しい経済制裁下にあり、文化遺産を守る体制が機能せず、古代遺物の盗難が急増していた。ラマッス像も1995年に頭部が切り取られ、11のパーツに分けて国外に密輸されそうになったところを阻止されている。

現在は首都バグダッドのイラク国立博物館に収蔵されているが、復元された頭部には当時の傷が目に見える形で残る。その後、2014年にはISがコルサバード遺跡の周辺地域を制圧したため、近隣住民が像の胴体部分を地中に埋めて隠し、破壊を免れたという。

SBAHのディレクター、ライス・フセインはアートニュースペーパーに対し、研究者チームは頭部と胴体を合体させるための方策を練ってると答えている。(翻訳:石井佳子)

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