アメリカ初の女性テレビ司会者、バーバラ・ウォルターズのコレクションがオークションへ
2022年12月30日に93歳で死去したアメリカTV界の名司会者、バーバラ・ウォルターズ。政治家から俳優まで多数の著名人のインタビューを手がけた女性初の司会者のプライベートコレクションが、NYのボナムズに出品される。
「ある夜、バーバラは、俳優サラ・ジェシカ・パーカーとその夫で同じく俳優のマシュー・ブロデリックを自宅に招待しました」
元CNNプロデューサーで故バーバラ・ ウォルターズの親友であったパメラ・グロスは、そう回想する。
「彼女のリビングルームには美しいピアノがあり、夕食後、バーバラ、サラ、マシューはピアノの周りに集まって古い曲を歌い始めました。残った私たちは、彼らの様子をただ見つめていました。とても特別な夜であり、それがバーバラの生き方でした」
2022年12月に93歳で亡くなったウォルターズの交友関係は幅広く、華やかだった。彼女はよく、著名なインテリアデザイナー、マリオ・ブアッタが監修したマンハッタンのイーストサイドにある自宅に、俳優マイケル・ダグラスとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ夫妻やヒュー・ジャックマン、デザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグやメディア界の重鎮バリー・ディラー、作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーなどといった著名人を招いてディナーやパーティーを開催した。
そんなウォルターズが愛した宝飾品やその他の私物が、ウォルターの娘ジャクリーン・ダンフォースとオークションハウスのボナムズの共同プロデュースにより11月6日に開催されるボーナムズNY「バーバラ・ウォルターズ:アメリカン・アイコン」に出品される(オンラインオークションは10月29日から11月7日まで)。オークションの収益はウォルターズが懇意にしていた慈善団体に寄付される予定だ。
今回出品されるのは、優雅でエレガントな生活を愛したウォルターが所有した300以上にのぼる様々なアイテムで、そこには19世紀から20世紀に活躍した、ジョン・シンガー・サージェントやジョン・ウォーフ、ウィリアム・メリット・チェイスらの絵画なども含まれる。
ボーナムズのアメリカ美術責任者、モーガン・マーティンは、「これらはまるで星座のよう。中でも最も明るい光を放つのはサージェントの作品でしょう」と期待を込めつつ、こう続ける。
「ウォルターズはこれらの絵画と、非常に個人的な結びつきを感じていました。彼女のベッドの上に飾られていたジョン・ウォーフの作品に、彼女はいつも母親の存在を感じていたと言います。この作品はボストン・パブリック・ガーデンを描いたもので、ボストン育ちのバーバラにとって、とても大切な存在でした」
1891年に描かれたサージェントの《Egyptian Woman(Coin Necklace)》は、予想落札価格120万ドルから180万ドル(約1億8000万円から2億7000万円)、ウォーフが1950年頃に描いた《Swan Boat, Boston Public Gardens》は、同1万ドルから1万5千ドル(約150万円から225万円)。
ウォルターズはまた、素晴らしい宝飾品のコレクションも所有しており、その中にはウォルターズの元夫(彼女は4回結婚している)でテレビプロデューサーのマーヴ・アデルソンが彼女に贈ったハリー・ウィンストンの婚約指輪(予想価格60万ドルから90万ドル、約9000万円から1億3500万円)も含まれている。ほかにも、ウォルターズが1991年のイベントで着用したルビーとダイヤモンドの花のブローチ(予想価格1万2000ドルから1万8000ドル、約180万円から270万円)や、ジュエリーラバーたちの間で「JAR」として知られるパリのジュエリーデザイナー、ジョエル・アーサー・ローゼンタールによるオーダーメイドのイヤリング(15万ドルから30万ドル、約2250万円から4500万円)などが出品される。
ボナムズNYのディレクター兼ジュエリー部門責任者のキャロライン・モリッシーは、「ウォルターズはシックなセンスの持ち主でした。JARによるオーダーメイドの作品を着用できるほど大胆な女性は世界でもそう多くありませんが、ウォルターズはまさにそうした女性の一人でした。JARはクライアントの個性を尊重する作品も多くつくっていますが、このイヤリングは、ウォルターズのエネルギッシュで楽しい性格をよく表現していると思います」
前出のパメラ・グロスも同意する。
「バーバラは、素晴らしい審美眼の持ち主でした。服装からディナーのテーブルセッティングに至るまで、彼女が選ぶあらゆるものに、バーバラの個性とスタイルが反映されていたのです」
from ARTnews