イスラエルへの資金援助に抗議。先住民アーティストが米ナショナル・ギャラリーの展示作品の撤去を要請
アメリカ政府によるイスラエルへの資金援助計画に対する抗議を示すため、アーティストのニコラス・ガラニンとメリット・ジョンソンが、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに作品の撤去を求めた。
11月3日にニコラス・ガラニンとメリット・ジョンソンが撤去を要請したのは、《Creation with her Children》と題された2017年の彫刻で、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの現代ネイティブ・アメリカン・アート展「The Land Carries Our Ancestors(大地が伝える先祖の知恵)」に出展されている大型作品の1つ。アーティストのジョーン・クイック=トゥ=シー・スミスの企画による同展は、ナショナル・ギャラリーにとって30年ぶりとなる先住民アートの展覧会だ。
アラスカのトリンギット族・ウナンガクス族出身のガラニンと、特定の部族には属していないジョンソンによる彫刻は、破れた部分を防水シートで繕った17世紀のドレスの下に子どもを隠した母親を描いたもので、スカートの裾からはこじ開けられた牙だらけの獣の口が覗く。2人によると、「何百年にもわたる植民地化や企業化、商品化による隷属に耐えてきた人物」を表現しているという。
ガラニンは、自らのインスタグラムアカウントでこう書いている。
「パレスチナへの軍事攻撃と大量虐殺を続けるイスラエルにアメリカ政府が資金援助を行おうとする今、残念ながらナショナル・ギャラリーから私たちの作品を撤去するよう求めざるを得ません。我われは政府に対し、即時停戦とイスラエルへの軍事援助削減、ガザへの包囲攻撃解除を求めます」
ナショナル・ギャラリーの広報担当者は、アーティストの要望通り作品を撤去することを明らかにした。
11月2日に米議会下院は、イスラエルに143億ドル(約2兆1400億円)の支援を提供し、内国歳入庁の予算を削減する共和党の法案を可決。資金の多くをイスラエル軍の防空システム、アイアンドームなどの強化に用いる計画が示されている。しかし、民主党が過半数を握る上院を通過して法案が成立する見込みは薄い。また、最終的にはバイデン大統領の署名が必要だが、大統領は拒否権を発動するとしている。(翻訳:石井佳子)
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