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クリスティーズの2024年総売上高は前年から「たったの8%減」。下半期で業績回復

世界最大のオークションハウスの一つであるクリスティーズが2024年の総売上高を57億ドル(約8745億円)と発表した。前年と比べて8%売上は減少しているものの、下半期に開催されたアートフェアやイブニング・セールにおいて好調な売上を記録したことから、2025年はよい結果が残せるとCEOのギヨーム・セルッティは推測している。

クリスティーズのCEO、ギヨーム・セルッティ。Photo: AFP via Getty Images

年末は各企業が決算を発表する時期だが、クリスティーズも12月17日、2024年の業績を発表した。CEOを務めるギヨーム・セルッティはこの報告の中で、同社の売上予測は美術品とラグジュアリー品を合わせて57億ドル(約8745億円)に達する見込みで、昨年の総売上63億ドル(現在の為替で約9667億円)から「たった8%ほど」の減少だと語った。

7月に開かれた上半期の総売上高の発表記者会見と同様に、「厳しい」市場状況が今でも続いているものの、総売上額が減少したなかでも基本的なパフォーマンス指標は堅調な結果を残しているとセルッティは語った。

「アート市場にとって厳しい状況が続きましたが、当社にとっては実りの多い一年となりました。出品した作品の86%には買い手が付き、実際の落札価格は予想最低落札価格を112%上回りました。また、一つのロットにつき3.7人の入札者が付くなど、当社の主な業績評価指標は前年と比べて成長を示しており、2025年はよりよい結果を残せる年になると確信しています」

低迷する市場のなかで、上半期に思うような業績が残せなかったクリスティーズだが、10月に開催されたフリーズ・ロンドンやアート・バーゼル・パリの好調な売上の影響もあり、同社の業績は下半期で回復をみせている。11月にニューヨークで行われた20世紀美術のイブニング・セールでは、1億ドル超という脅威的な価格で落札されたルネ・マグリットの代表シリーズ「光の帝国」の1点を含め、4億8600万ドル(約746億円)の収益を上げている。また、同じオークションにおいてエド・ルシェの《Standard Station, Ten-Cent Being Torn in Half》は、ルシャ作品の中で史上最高額となる6800万ドル(約104億円)超で落札されている(Artnet Newsによると、本作はアマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスが落札したという)。

セルッティはまた、今年は絵画だけでなく宝石でも最高落札額を記録したと発表。例えば、6月にニューヨークで開催されたオークションでは、10.2カラットのピンクダイヤモンド、エデンローズが1340万ドル(約20億円)で落札されている。このオークションでは出品された144点のうち90点が落札され、売上総額は4440万ドル(約68億円)に達している。また、12月にクリスティーズ・ニューヨークが開催したマグニフィセント・ジュエルズでも、4920万ドル(約75億円)の売上を記録。落札率は97%に達したという。

上半期のプライベート・セールの売上額は発表されていないが、セルッティの報告によれば、今年は昨年と比べて41%増の15億ドル(約2300億円)に達し、総売上高の27%を占めたという(昨年のプライベート・セールの売上総額は12億ドル[現在の為替で約1841億円]だった)。

クリスティーズは売上高とともに顧客の居住地域も発表している。売上高の42%を占めるのはアメリカ大陸で、20世紀・21世紀美術の新規顧客は18%増加したという。また注目すべき傾向としては、クリスティーズの同地域の顧客および入札者の4分の1以上がミレニアル・Z世代に属していること。同社の顧客のおよそ30%が43歳以下であることを考慮すると、この数値に驚きはないかもしれない。また、2024年の入札の81%がオンラインだったことも、こうした顧客デモグラフィーの変化を反映している可能性がある。

またセルッティは、今年はロンドンでイブニング・セールを開催しなかったにもかかわらず、同市からの入札者と購入者の数が15%増加し、新規購入者は29%増加したと述べている。(翻訳:編集部)

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