「今後も粘り強く訴えていく」──感謝祭のNYで文化施設を舞台に親パレスチナ活動家らが抗議活動を展開
アメリカ・ニューヨークでは、ホイットニー美術館からアメリカ自然史博物館に至るマンハッタン全域の文化施設で、親パレスチナ活動家やデモ参加者たちによる抗議活動が行われた。
アメリカ・ニューヨークでは、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以降、抗議活動とデモは頻度と強度を増し、アート業界においても、アーティスト、パトロン、美術館職員の間の政治的分断は広がり続けている。
11月22日(水)、ホイットニー美術館
11月22日には、デモ参加者らがホイットニー美術館の正面入り口に血糊を撒き散らした。彼らはメッセージの書かれたプラカードを手にしていたが、その中には、最近、母校ハーバード大学で親パレスチナの学生団体を非難したホイットニー美術館のボードメンバーでCEOのケン・グリフィンは「テロリスト」だとするものもあった。
ホイットニー美術館でのデモはマンハッタンで行われた「ガザのための行進」に合わせて行われ、参加者たちは(ホイットニー美術館のある)街の西側を行進したが、その間、美術館のすぐそばを通る「ハイライン」への立ち入りは警察によって阻止された。パレスチナ人主導の地域団体である「Within Our Lifetime(WOL)」がソーシャルメディアに投稿した動画には、美術館の階段と正面玄関の回転ドアが赤い塗料がばら撒かれた様子が映っているが、このデモによる逮捕者はいなかった。
ホイットニー美術館が活動家たちの標的になったのはこれが初めてではない。2018年11月には、当時ホイットニーの副館長だった億万長者のヘッジファンダー、ウォーレン・カンダースが所有する防衛請負業者サファリランドLLCの催涙ガス弾が、アメリカとメキシコの国境を越えようとした子どもを含む移民らに対して発射されたことが明らかになった。これを受けて、カンダース解雇を訴えるデモが8カ月にも渡って展開された。
11月23日(木)、ニューヨーク公共図書館
一方、ニューヨーク公共図書館では感謝祭の11月23日に集会が開催され、建物の壁面が親パレスチナ活動家たちによる「Free Palestine」と書かれた落書きによって汚された。また同館の大理石の噴水やファサードの一部(そこには、投資管理会社ブラックストーンのCEOでトランプ元大統領の顧問を務めたスティーブン・A・シュワルツマンの名が刻まれている)には、赤い手形が塗りつけられた。これらの被害総額は7万5000ドル(約1100万円)。シュワルツマンは2008年、改修費用として1億ドル(現在のレートで約150億円)を図書館に寄付しており、今年10月には、イスラエルに700万ドル(約10億円)の支援を約束している。
この抗議活動についてWOLはインスタグラムに、「私たちはマディソン・スクエア公園を起点にマンハッタンの市内全域で、買い物や交通機関を妨害し、最終的には、(感謝祭という)お祝い、及び、タートル・アイランド(ネイティブアメリカンの人々が呼ぶところの北アメリカを意味する)の先住民族とパレスチナの先住民族の虐殺──いずれもアメリカとイスラエルという入植者によって行われた──の正当化を妨害した」と投稿した。ニューヨーク公共図書館関係者らは声明で、落書き除去の費用を賄うための募金キャンペーンはまだ開始していないものの、「この破壊行為の修復には多額の費用がかかる」として、その可能性を示唆している。また、図書館の広報担当者によれば「これによる計画外の閉鎖はない」という。
11月25日(土)、アメリカ自然史博物館
11月25日には、数百人の親パレスチナのデモ参加者がコロンバスサークルに集まり、アメリカ自然史博物館を目指して北へ行進した。
WOLがインスタグラムに投稿した動画によれば、デモ参加者らは自然史博物館に到着すると、パレスチナの旗と「虐殺停止」「ガザ解放」と書かれたプラカードを掲げながら、「イスラエルが落とす爆弾は、アメリカが支払っている。今日は何人の子どもを殺したんだ?」と叫んだ。抗議者らは博物館に入ろうとしたが警察に阻止された。
この非暴力集会は、イスラエルの刑務所に拘束されているパレスチナ人と引き換えに、ハマスに拘束されている人質を解放すること、そして民間人への燃料や食料、その他の人道支援物資の提供を許可するため、ガザでのイスラエル・ハマスの停戦2日目に開催された。
ガザ保健省が提供した統計によれば、10月7日のイスラエル攻撃以降、ガザでは少なくとも1万4000人のパレスチナ人が殺害され、世界保健機関によると、ガザでの死亡者の約70%が女性と子どもであるという。
WOLの代表で25日の抗議活動の主催者であるナーディーン・キスワニは、アメリカ自然史博物館がある地域のメディア、ウェスト・サイド・ラグの取材に対し、停戦期間中にガザ北部に戻ろうとするパレスチナ人がイスラエル軍の銃撃の脅威により入国拒否されたとの報道を引用し、「WOLはこの合意を正当な人道的休止とは考えていない。よって、私たちの抗議活動は止まらない。今後も、粘り強く訴えていく」と語っている。
from ARTnews