ARTnewsJAPAN

今週末に見たいアートイベントTOP5: フランク・ロイド・ライトの四半世紀ぶりの大回顧展、長谷川愛ら8作家が都市にひそむ「ミエナイモノ」の可視化に挑む

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

山脇紘資「Purple #2」162×130.3 cm, oil on canvas, 2023

1. 都市にひそむミエナイモノ展(SusHi Tech Square)

藤倉麻子《あの山の裏/Tire Tracker》

AIの検知から逃げるゲーム、「人工子宮が実現した東京」から考える未来都市

テクノロジーを活用したメディアアートの体験の場として昨夏オープンした「SusHi Tech Square 1F Space」。東京都が主催する、未来の東京を皆で考えるきっかけづくりを目的とした展示シリーズの第2期は「都市」がテーマだ。都市には目に見える人工物以外にも、人々の記憶や愛着、生活を支えるテクノロジーなどの“ミエナイモノ”がひそんでいる。それを8組の若手クリエイターの作品や最新技術の紹介を通じて可視化させるという。私たちの想像は、どこまで未来の都市生活に近づけるだろうか。キュレーションは、闘病の末、昨年末に逝去した1987年生まれの塚田有那が担当した。

会場にはユニークな発想の作品がそろい踏みだ。自動運転技術の発展が進む昨今、Tomo Kihara & Playfoolは“都市で AI に見つからないためには?”というテーマで、AI に人間と検知されないように横断歩道を渡り切るゲームを出展。Qosmoは、ChatGPTに複数の異なる人格をシミュレートさせ、社会問題などのなかなか答えが出ない内容を議論させる。その会話に耳を傾けると、偏りのない「ありきたり」な結論に落ち着いてしまい……。綿密な科学的リサーチの上で「ありえるかもしれない未来」を提案してきた長谷川愛は、人工子宮が実現した未来の東京を想定した、参加型のロールプレイ型インスタレーションを発表する。参加作家はほかに、菅野創+加藤明洋+綿貫岳海、gluon + 3D Digital Archive Project、佐藤朋子、セマーン・ペトラ、藤倉麻子。特別展示として、東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 八谷和彦研究室より島田清夏、平野真美。

都市にひそむミエナイモノ展
会期:2023年12月15日(金)~ 3月10日(日)
会場:SusHi Tech Square 1F(東京都千代田区丸の内3-8-3)
時間:11:00 ~ 21:00 (土曜と休日は10:00 ~ 19:00、入場は30分前まで)

LINE公式アカウントで展覧会情報をチェック

「ARTnews JAPAN」LINE公式アカウントでは、いち早く「今週末に見たいアートイベント」の更新情報をお届けしています。ぜひご登録ください!

2.  永田康祐「ひとつといくつかの語り」安城市若手芸術家応援プログラムvol.4(安城市民ギャラリー)

永田康祐《Translation Zone》

気鋭の作家が「翻訳」をキーワードに思考する、文化の曖昧な境界

東京藝術大学映像研究科の在学中に「Tokyo Sonic Art Award」のグランプリを受賞し、東京都写真美術館や21_21 DESIGN SIGHTなどでも展示を重ねてきた注目のアーティスト・永田康祐が、故郷の愛知県安城市で個展を開催する。自身が書いたエッセイの朗読を組み合わせた映像作品や、写真、インスタレーションなどで哲学的な思考を展開してきた、1990年生まれの永田。作品はビジュアルそのものではなく、観客と作家が一緒に考えることに重きが置かれる。

今回展示するのは「あいちトリエンナーレ2019:情の時代」で発表した映像作品《Translation Zone》を中心に、その要約版の《Digest》や、日本語吹替版の新作など。《Translation Zone》では、調理の工程を映しながら「翻訳」をキーワードに、各国の食や文化、その背景にあるものへと考察が進められていく。日本の食材であるうどんを使ってタイ料理のパッタイを作る“翻訳”も。どこまでが「日本食」なのかという境界の曖昧さなど、作品上で思考の海が広がっていく。展示室には、作品制作時に参照した書籍を集めた移動図書館も出現する。

永田康祐「ひとつといくつかの語り」安城市若手芸術家応援プログラムvol.4 
会期:2023年12月16日(土)~ 1月21日(日)
会場:安城市民ギャラリー(愛知県安城市安城町城堀30番地)
時間:9:00 ~ 17:00 (入場は30分前まで)


3. 巡り来る自己:F collection の一瞥(N&A Art SITE)

山脇紘資「Purple #2」162×130.3 cm, oil on canvas, 2023

匿名のアートコレクター “F氏” 秘蔵の現代美術を特別公開

美術評論家の南條史生が企画運営を行うN&A Art SITEで、匿名のアートコレクターの秘蔵作品を公開する。約15年をかけ100点を越える日本人若手作家の作品を集めてきた“F氏”が、20・30・40代の各世代を代表する作家として、仲衿香、山脇紘資、鈴木雅明の3人を紹介する。普段はお目にかかれない作品が見られるだけでなく、コレクターとアーティストとの関係性が垣間見られる場にもなる。

会場では、コレクションから各作家の1点と、今展に合わせて制作された新作が数点ずつ展示される。日常で目にする身近なロゴなどを作品に取り込む仲衿香は、絵の具をクリームのように厚く塗り重ねた筆致が特徴。山脇紘資が巨大なキャンバスに描くのは、動物の顔だ。鑑賞者はこちらを見つめる動物に、自分自身を投影することになる。人工的な夜の光をテーマに描く鈴木雅明は、都会の夜の街角を抒情的に描き出す。“F氏”が注目した3人の表現は、まさに三者三様だが、描かれる対象への深い洞察と観察眼、表現に対する情熱には共通するものがあるという。

巡り来る自己:F collection の一瞥
会期: 1月10日(水) ~ 27日(土)
会場:N&A Art SITE(東京都目黒区上目黒1-11-6)
時間:12:00 ~ 17:00


4. 開館20周年記念展/帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築(パナソニック汐留美術館)

フランク・ロイド・ライト 《大バグダッド計画案(イラク、バグダッド)1957年 鳥瞰透視図 北から文化センターと大学をのぞむ》 コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ蔵The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | AveryArchitectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

巨匠フランク・ロイド・ライトの、四半世紀ぶりの大型回顧展

偉大なる近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867‒1959)の、日本では四半世紀ぶりとなる本格的な回顧展。本国の米ペンシルべニア州「カウフマン邸(落水荘)」などのほか、東京の「帝国ホテル二代目本館」「自由学園」といった多くの名作を残した。今展では、精緻で華麗な肉筆の建築ドローイングを日本初公開するほか、帝国ホテルを基軸とした7つのセクションで生涯の仕事を紹介する。今も続く膨大な資料の研究成果を反映し、“建築”の観点からだけでなく、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画にまで及ぶライトの視野と知性を浮かび上がらせる。

1893年のシカゴ万博で日本文化に触れて以来、7度の来日を重ね、熱烈な浮世絵愛好家の顔も持つライト。余白を大きくとったり、近いものを拡大して描いたりするライトのドローイングは、浮世絵的な世界観をもつ。100年前の帝国ホテル二代目本館の建設時に作られた模型の複製や、1930年代後半から取り組んだ一般向けの安価な「ユーソニアン住宅」の、玄関から居間までの原寸モデルも見どころだ。イスラム文化との出会いから生まれた美しい都市像「大バグダッド計画」なども紹介される。

開館20周年記念展/帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
会期:1月11日(木)~ 3月10日(日)※2月17日(土)以降の土曜・日曜・祝日、3月1日(金)~要日時指定予約
会場:パナソニック汐留美術館(東京都港区東新橋1-5-1  パナソニック東京汐留ビル4階)
時間:10:00 ~ 18:00  (3月1日、3月4日~9日は20:00まで、入場は30分前まで)


5.  RE:FACTORY_2(WALL_alternative)

23組のアーティストが「アート」と「音楽」の領域を横断

現代アートを中心に扱うアートギャラリーに、カウンターバーを併設したオルタナティヴ・スペース「WALL_alternative」が、昨年11月末にオープン。エイベックス・クリエイター・エージェンシーが運営し、昔から互いに影響を与え合い、化学反応を起こしてきた「アート」と「音楽」をコンセプトにした展覧会を開催する。

昨年、寺田倉庫G1ビル(天王洲)を舞台に開かれたアートフェア「RE : FACTORY」の関連展。「たえず隣接し、共創してきたアートと音楽の様々なコラボレーション」のコンセプトを引き継ぎ、アート専門のYouTube チャンネル「MEET YOUR ART」に出演したアーティスト23組が参加。“音楽”からインスピレーションを得て制作した新作を中心に、それぞれの作家による音楽にまつわるテキストとともに展示する。参加作家は、Dan Isomura × Sareena Sattapon、大久保紗也、大野修、岡田佑里奈、加賀美健、金氏徹平川人綾、後藤夢乃、GORILLA PARK、高山夏希、東城信之介、那須佐和子、長谷川彰宏、藤倉麻子、布施琳太郎、松岡柚歩、丸山太郎、南谷理加、谷敷謙、やましたあつこ、山田康平、山田美優、油野愛子。

RE:FACTORY_2
会期: 1月12日(金)~ 2月3日(土)
会場:WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4)
時間:18:00 ~ 24:00 

あわせて読みたい