大英博物館の元職員、盗んだ900万円相当の品を約7500円でeBayに出品
大英博物館から盗まれた最高5万ポンド(約930万円)の価値がある少なくとも1点の品物が、eBayでわずか40ポンド(約7500円)で売りに出されたという。
大英博物館の8月16日の発表によると、これまで紛失、盗難、破損された品物の大半は「紀元前15世紀から19世紀までの金や半貴石、ガラスの宝飾品」で、主に学術研究目的のため保管されており、展示されていなかった。
しかし、こうした品物の一部は少なくとも2016年からeBayでの出品が確認されており、ある骨董品の専門家がテレグラフ紙に語ったところによると、大英博物館は3年ほど前から、スタッフの一人が保管庫にある所蔵品を盗んでいる疑いを抱いていたという。
2016年にeBayに出品されたのは、半貴石オニキスから作られたローマ時代の宝飾品で、最低価格40ポンド(約7500円)で販売されていた。入札者はいなかったが、あるディーラーはテレグラフに対し、この宝飾品には本来、2万5000ポンドから5万ポンド(約470万円から約930万円)の価値があると語っている。
盗難品、紛失品、破損品の発見を受けて博物館は、独自にセキュリティの見直しを開始すると発表。また、犯人と思われる職員を解雇したこと、そしてその職員に対し法的措置を取ること、また警視庁経済犯罪対策本部による捜査が進行中であることも明らかにした。
博物館が当該職員の解雇を匿名で発表すると、タイムズ紙とテレグラフ紙はいずれも、その職員はギリシャ古美術品キュレーターのピーター・ヒッグスであると特定。ヒッグスは今年初めに解雇されるまで30年以上博物館で働き、大規模な展覧会を企画したり、本の執筆を行っていた。彼の家族はテレグラフに対し、彼は無実であり、要職を失ったことに「打ちのめされている」と語った。
皮肉にも2013年、イギリスの税関職員がヒースロー空港で押収された像の所有者を特定するため、大英博物館に支援を求めた際の担当者がヒッグスだった。当時ヒッグスはガーディアン紙に対し、この盗品が2000年前のギリシャの女神の大理石像だとすぐに分かった、と話している。この貴重な像は2021年にリビアに返還された。
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