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今週末に見たいアートイベントTOP5:バンクシー、カウズら10作家60点以上が集結!、アピチャッポン・ウィーラセタクンが新作インスタレーションを発表

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

バンクシー(BANKSY) 「ブレット・ホール・バスト(弾痕の胸像)」Photo by © MUCA / wunderland media

1. 高木由利子 「カオスコスモス 弐 - 桜 -」(GYRE
GALLERY)

展示風景

桜の儚さや潔さに魅了され撮り続けた10余年の記録

衣服や人体などを被写体にし、独自の視点で 「人の存在」を撮り続けるフォトグラファーの 高木由利子。カオス(混沌)から、何らかの働きの元に、コスモス(秩序=宇宙)が誕生したであろうと想像していた高木は、ふとしたことから自然現象をレンズを通して捉えていくうちに、もしかするとカオスとコスモスは同時多発的に共存しているのではないか、と言う「気づき」が生じてきたという。肉眼では見えない、あるいは気付かない自然現象に潜んでいる神秘的で、奇跡のような瞬間がレンズを通して視覚的に現れることがある。それを高木は「chaoscosmos」と呼んだ。

本展は、高木が取り組む「chaoscosmos」の一環として、十年余りに渡って桜を撮り続けてきたシリーズを展示する。平安時代の国風文化以降、日本人にとって桜は花の代名詞となるほど特別な位置を占め、現代の人々も毎年開花を心待ちにする。しかし高木は、桜の開花よりもその儚さや潔さに魅了されてきたという。「レンズを通して桜が見せてくれる密かな有り様を目撃してもらいたい」と高木は語る。

高木由利子 「カオスコスモス 弐 - 桜 -」
会期:3月1日(金)~ 4月29日(月)
会場:GYRE GALLERY(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)
時間: 11:00 ~20:00

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2. 遠距離現在 Universal / Remote(国立新美術館)

ティナ・エングホフ Tina Enghoff 《心当たりあるご親族へ――男性、1954 年生まれ、自宅にて死去、2003 年 2 月 14 日発 見》2004 年 アーカイバルピグメントプリント、120×160×5cm Possible Relatives / Man born 1954, deceased, found in home February 14, 2003, 2004 Archival pigment print, 120×160×5cm ©Tina Enghoff Courtesy of the Artist

ポストコロナ時代の社会と個人のありようを現代美術で考察

20世紀後半以降、人、資本、情報の移動は世界規模に広がった。そして環境負荷の途上国への転嫁、情報格差などの問題を抱えて迎えた2020年代。世界的な緊急事態であった新型コロナウイルス感染症というパンデミックが起こった20年からの約「3年間」が私たちにとってどのような時期だったのか。社会はいかにして今の姿に至ったのか。今後の私たちはどこに向かうべきか。ポストパンデミック社会と個人の在り方を現代美術で考察する。

資本と情報が世界規模で移動する今世紀の状況を踏まえて、「遠距離現在 Universal / Remote」というタイトルが付けられた。過剰な監視システムや精密なテクノロジーのもたらす滑稽さ、また人間の深い孤独を感じさせる作品群は、今の時代、あるいはポストコロナ時代の世界と真摯に向き合っているようにも見える。本展は、「Pan- の規模で拡大し続ける社会」、「リモート化する個人」の2軸で、これらの社会的条件が形成されてきた今世紀の社会の在り方に取り組む8人と1組の作品を紹介する。出品作家は井田大介、徐冰(シュ・ビン)、トレヴァー・パグレン、ヒト・シュタイエル、ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ、ミロス・トラキロヴィチ、地主麻衣子、ティナ・エングホフ、チャ・ジェミン、エヴァン・ロス、木浦奈津子。

遠距離現在 Universal / Remote
会期:3月6日(水)~ 6月3日(月)
会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
時間: 10:00 ~18:00(金・土曜は20:00まで、入場は30分前まで)


3. ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ(国立西洋美術館)

弓指寛治《ウエノさんのブルーシート小屋》2023年、アクリル、鉛筆/木製パネル、新聞紙、作家蔵

21組の作家が提起する国立西洋美術館の課題と新たな可能性

国立西洋美術館の母体となった松方コレクションを築いた松方幸次郎は、日本の若い画家たちに本物の西洋美術を見せるために、膨大な数の美術品を収集した。その原点に着目し、1959年の開館以来初めて、現在活躍するアーティストとのコラボレーションによる展覧会を開催している。

国内外で活躍する21組の現代アーティストたちが、同館の所蔵作品からインスピレーションを得て制作した新作や、美術館という場所の意義を問い直す作品などを通して、アーティストたちが国立西洋美術館やそのコレクションをどう見つめ、どのような問題を提起しているか紹介する。また、同時にモネ、セザンヌ、ポロックら西洋美術史に名を刻むアーティストたちの作品約70点も展示。過去と現代に制作された作品の対話を通じて、同館の新たな可能性を探る。展示作家は飯山由貴、梅津庸一、遠藤麻衣、小沢剛、小田原のどか、坂本夏子、杉戸洋、鷹野隆大、竹村京、田中功起、辰野登恵子、エレナ・トゥタッチコワ、内藤礼、中林忠良、⾧島有里枝、パープルーム(梅津庸一+安藤裕美+續橋仁子+星川あさこ+わきもとさき)、布施琳太郎、松浦寿夫、ミヤギフトシ、ユアサエボシ、弓指寛治。

ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ
会期:3月12日(火)~ 5月12日(日)
会場:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
時間: 9:30 ~17:30(金・土曜、4月28・29日、5月5・6日は20:00まで、入場は30分前まで)


4. テレビ朝日 開局 65 周年記念「MUCA展 ICONS of Urban Art ~バンクシーからカウズまで~」(森アーツセンターギャラリー)

バンクシー(BANKSY) 「ブレット・ホール・バスト(弾痕の胸像)」Photo by © MUCA / wunderland media

バンクシー、カウズなどアーバン・アートの代表作家が一堂に

ドイツ・ミュンヘンの中心部にある変電所跡地にある、20・21世紀のアーバン・アートや現代アートにおける最も有名なアーティストの作品を展示する施設としては欧州最大級の Museum of Urban and Contemporary Art( MUCA)。アーバン・アートとは、道路や橋など都市の公共空間にアートを制作し、時に政治的、社会的なメッセージを人々に訴えかける新しいアートの手法だ。

本展は、1200点以上の同館所蔵品から、バンクシー、カウズ、 バリー・マッギーを始め、アーバン・アートのジャンルを切り開いてきた10作家にスポットを当て、日本初公開の作品を含む 60点以上を紹介する。中でも注目は、バンクシーが2015年に開催した「ディズマランド」のアイコン的彫刻《アリエル》(2017)や、サザビーズのシュレッダー事件で有名となり、近年改題されていたことが発覚した《風船のない少女》(2018)。カウズの最も人気を集める「コンパニオン」シリーズや、JRの大作も見逃せない。そのほか出品作家はシェパードフェアリー、ヴィルズ、インベーダー、オスジェメオス、リチャード・ハンブルトン、スウーン。

テレビ朝日 開局 65 周年記念「MUCA展 ICONS of Urban Art ~バンクシーからカウズまで~」
会期:3月15日(金)~ 6月2日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー(東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー 52F)
時間: 10:00 ~19:00(金・土・祝日・祝前日・4月27日〜5月6日は20:00まで、入場は30分前まで)


5. アピチャッポン・ウィーラセタクン 「Solarium」(SCAI THE BATHHOUSE)

ホラー映画の記憶から着想を得た新作インスタレーションを発表

タイ・チェンマイを拠点に活動する映像作家、アピチャッポン・ウィーラセタクン。その作品は、拡張した時間にまたたく光の効果によって、孤独な夢、近しい身内の物語や抑圧された集団の記憶など、心の片隅に追いやられた不穏な心理を予感させる。

同ギャラリーでは7年ぶりの個展となる本展では、ガラスの両面に映し出される2チャンネル映像の新作インスタレーション《ソラリウム》(2023)を披露する。盲目の妻を救うために患者の眼球を盗んだ、狂気の医師を描いた、幼少期に夢中になったタイのホラー映画『The Hollow-eyed Ghost』(1981)から着想を得ており、ガラスには、暗闇の中で自身の眼球を探しさまよう男の姿が映し出されるが、やがて彼は日の出の太陽によって破壊されてしまう。そして、ホログラフ・フィルムが貼られた映写用のガラスパネルに亡霊が浮かび上がり、鑑賞者のいる空間に息づき始める。この作品は、幾何学、光、知覚、動きのスタディを掘り下げることで、ハンス・リヒター、マルセル・デュシャン、フェルナン・レジェら産業革命や映画黎明期の実験的アーティストへのオマージュともなっている。そのほか、初の一般公開となるドローイングや、5つの箱それぞれに2分から1年までの時間を凝縮して撮影された52枚の写真が収められた《Boxes of Time》(2024)が展示される。

アピチャッポン・ウィーラセタクン 「Solarium」
会期:3月16日(土)~ 5月25日(土)
会場:SCAI THE BATHHOUSE(東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡)
時間: 12:00 ~18:00

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