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  • 2023.12.21

鑑定士も驚嘆! 570円で買った花瓶が予想の倍となる1500万円超で落札される

リサイクルショップ巡りが趣味の女性が4ドル(約570円)で購入した花瓶が、実はヴェネチアの著名な建築家が手掛けた希少なものだと判明。ニューヨークオークションで10万7100ドル(約1532万円)で落札された。

12月13日、オークションに出品されたカルロ・スカルパの花瓶。Photo: Courtesy of Rago/Wright

このニュースを最初に報じた雑誌エル・デコによると、2023年6月、アメリカ・バージニア州ハノーバー郡にあるリサイクルショップ「グッドウィル」を訪れたジェシカ・ヴィンセントは、乱雑に商品が置かれた棚の中でひときわ目を引く、高さ約35センチの花瓶を見つけた。花瓶はボトル型で、シーフォームグリーンとワインレッドの渦巻きが勢いよく描かれていた。

「しっかりとしたガラスで、ガラクタではないとわかりました」と彼女は振り返る。花瓶を裏返すと、店の蛍光灯の光がムラーノと刻まれた文字を照らしていた。ヴィンセントが店のスタッフに値段を聞くと、たった3ドル99セント(約570円)だという。掘り出しものだった。

花瓶を購入したヴィンセントは、その後、ライト・オークション・ハウスの代表であるリチャード・ライトにEメールで花瓶の写真を送った。ライトがその画像をガラス専門家サラ・ブルムバーグと、同じくガラスの専門家であるジム・オリヴェイラに転送したところ、2人は花瓶が本物であるかどうかをこの目で確認するため、ヴィンセントのいるバージニア州まで車を走らせたという。2人はこう話す。

「品物を実際に見ることが絶対に必要です。肉眼で確認することなしに本物かどうかは見極められません。私たちは何十年もそうしてきました」

2人は、この花瓶がヴェネチアの建築家カルロ・スカルパの作品ではないかと推測し、過去に彼の作品が展示された展覧会の図録などを使って鑑定した。その結果、花瓶は、スカルパが1940年代に、100年以上の歴史を持つムラーノ島のガラス工房、ヴェニーニのためにデザインした「ペンネラーテ」と呼ばれるシリーズの1点であることが判明したのだ。このシリーズの造形を実現するには熟練したガラス職人が必要だったため、作品数が非常に少なかった。

続いて2人は、「ペンネラーテ」シリーズの過去のオークションでの落札額を調査した。これまで3万ドルから20万ドル(約430万~2860万円)で落札されていたことから、この花瓶の「妥当な」予想落札額は3万ドルから5万ドル(約430万円~720万円)と見積もった。そして12月13日、いよいよ花瓶がニューヨークのライト・オークションに出品されると、ハンマープライスで8万5000ドル(約1216万円)、手数料込み10万7100ドル(約1532万円)という、予想を大きく上回る額で落札された。

「1000ドルか2000ドルの価値があるかもしれないという予感はしましたが、もう少し調べてみるまで、実際にどれほどのものなのか全くわかりませんでした」

ヴィンセントはニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、驚きを隠せない様子でそう語っている。彼女はオークションの収益金を、最近購入した農家の改装に充てる予定だといい、「おそらくディナーにも行くつもり」と付け加えた。「正直なところ、今はどう感じていいのかわからない、とてもシュールな気持ち。まるで宝くじに当たったようです」

ヴィンセントはこれからもリサイクルショップに足繁く通うだろうが、棚に別のスカルパ作品が隠れている可能性は低い。というのも、現在、偽物が大量に出回っているからだ。

鑑定を行ったブルムバーグは、「35年間、このような作品を手にしたことはありませんでした。本当にめったにないことなのです」と、今回の一件が非常に珍しいケースであったことを強調している。(翻訳:編集部)

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