ヴェネチア市への入場料導入は本当に「成功」? 開始から約1カ月で4億円超を徴収
第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ(11月24日まで開催)のオープニング直後から試験的に運用が始まったヴェネチア市への「入場料」徴収の成果報告が行われた。詳しい分析はこれからだが、ルイジ・ブルニャーロ市長は「大成功」と評価した。
ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところによると、オーバーツーリズムと気候変動という二重の難題に直面しているヴェネチアで今年4月から運用が開始した、観光客に対する市への「入場料」について、ルイジ・ブルニャーロ市長は「大成功」であると胸を張った。一方、市当局は7月19日に行われた記者会見で、入場料の効果を検証するにはさらなるデータ分析が必要であると述べている。
第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ(11月24日まで開催)の幕開け間もなく導入されたこの入場料は、同市をピーク時に訪れる「日帰り 」観光客の数を抑える目的で導入された。
ヴェネチアを日帰りで訪れる観光客は事前にオンラインで登録し、入場料の5ユーロ(約830円)を支払った上で、市内へのアクセスに必要なQRコードを受け取る仕組みだ。ただし、すでに観光税を支払っている宿泊客や、学生や労働者など特定のカテゴリーについては免除された。登録していない場合は50〜300ユーロ(約8300〜5万円)の罰金が科される可能性があると報じられていたが、徴収が開始された4月から7月中旬までの29日間で実際に罰金が徴収された例はない。市の報告によると、入場料はこの期間の祝日と週末に主に適用され、当初見込んでいた70万ユーロ(約1億1800万円)の3倍以上となる243万ユーロ(約4億1200万円)を48万5000人から徴収したという。
確かに収益だけ見れば「成功」と判断して差し支えない結果ではあるが、観光客数を抑制するという目的においては「失敗」であるという意見もある。市議会議員のジョバンニ・アンドレア・マルティーニは、入手可能なデータを見る限りピーク時に観光客はむしろ増加していることから、入場料の導入は失策であると述べている。また、オーバーツーリズムを専門とする批評家で建築家のフランコ・ミリオリーニは、ヴェネチアの物価を考えると5ユーロでは抑制にはつながらないと指摘している。
一方、同市観光局のシモーネ・ヴェントゥリーニは、正確な訪問者数を把握できるだけでなく、観光客と事前にコンタクトできるこの施策を「文化革命」と称えた。今後の料金や運用方法については、さらなるデータ分析次第で料金の適用日数や増額などの可能性もあるという。
ブルニャーロ市長やヴェントゥリーニの前向きな評価とは裏腹に、ヴェネチアでは政治的な混乱にも直面している。というのも、ブルニャーロ市長は現在、当局の捜査を受けており、不動産取引をめぐって最近市議会議員が逮捕されている。野党議員は市長の辞任を求めており、入場料施策の将来は必ずしも明るいとは言えない。
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