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バスキアの贋作スキャンダルで1億4700万円の赤字。オーランド美術館が財政危機

2022年にバスキアの真贋をめぐり大スキャンダルが起きたフロリダ州オーランド美術館(OMA)。その影響で、同館が深刻な財政危機に陥っていることが発覚した。

フロリダ州のオーランド美術館(OMA)。Photo: Willie J. Allen Jr./Orlando Sentinel/Tribune News Service Via Getty Images

フロリダ州にあるオーランド美術館(OMA)は、2022年に開催された展覧会「Heroes & Monsters: Jean-Michel Basquiat(ヒーローとモンスター:ジャン=ミシェル・バスキア)」でバスキア作とされる絵画を展示していたが、それらの絵画の真贋を問う声が相次ぎ、調査の結果、FBI25点を押収する事態に発展した。その後FBIが、オークション出品者のマイケル・バーズマンを聴取したところ、バーズマンは共犯者とともにバスキアの贋作を制作したことを認めた。同館は、贋作を美術館に紹介したアーロン・デ・グロフト館長を解雇し、贋作を展示することで利益を得ようとしたとしてデ・グロフトとバーズマンを相手取って訴訟を起こしたが、デ・グロフトは不当解雇、名誉棄損、契約違反で同館を反訴していた

そんな中、オーランド美術館で行われた内部会議の音声データがリークし、同館の厳しい財政状況が明らかになった。オーランド・センチネル紙とニューヨーク・タイムズ紙によると、会議ではでエグゼクティブ・ディレクター、キャサリン・マットソンの発言として、現在進行中のFBIの捜査を含む今回の事態に対処するため、数十万ドルを費やし「危機管理コミュニケーションの専門家」と「弁護団」を雇い、それにより現在50万ドル(7370万円)の負債を抱えたこと、そして、年間予算約400万ドル(約5億9000万円)のうち、6月30日の年度末に100万ドル(約1億4700万円)の赤字になる見込みであることが言及されている。

マットソンは、「1年以内に予算外の出費が25%増加しました。美術館の積立金を投入したことがクッションの役割を果たしましたが、信用枠も使い果たしました。このマイナスを賄うだけの資金が手元にはありません。 それが真実です」と厳しい現状を訴えた。

財政難を受けて、彼女は市内の有力な慈善家3人と会談したが、支援は得られなかった。今回の騒動を受け、オーランド美術館の寄付者の多くは、財政的支援を近隣のロリンズ美術館にシフトすることを検討しているという。実際に、大口の支援者であるマーティン・アンダーセン=グレイシア・アンダーセン財団は、18〜19世紀のアメリカ絵画の貴重なコレクションをロリンズに移す計画を発表した。

しかし、悪い状況ばかりではない。内部会議でマットソンは、同館の入場者数がコロナ禍以前に回復したことや、小中学校の生徒たちとの関わりを深めるプログラムの実施など、前向きな進展があったことを報告した。また、同館は声明の中で、「これらの騒動で発生した費用を、民事訴訟で被告から回収することを求めている」とし、「政府や慈善団体のパートナーからも金銭的支援を求めている」と述べた。(翻訳:編集部)

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