テート・モダンのエントランスを彩る2024年の作家が決定! 「破壊的で多感覚的な」彫刻で知られる韓国出身のミレ・リー
テート・モダンの広大なエントランス「タービン・ホール」に、新進気鋭のアーティストによる大規模作品を展示する名物企画の2024年版アーティストが決定した。抜擢されたのは、彫刻家のミレ・リー。作品は10月に公開される。
ミレ・リーは1988年韓国ソウルに生まれ、現在は韓国とアムステルダムを拠点に活動している。シリコンや油、粘土などの素材をポンプで運び、作品中に滴り落としたり床に流し込んだりする代表作の大規模インスタレーションは、どこか不穏で、ときに内臓を想起させる。
リーは、2021年に行われたアート・イン・アメリカのインタビューで、自らの作品について、「私は塊のようなもの、匿名的なものやデフォルメされたものをつくる傾向があります。自分の作品をグロテスクと思うか? 多少はそうかもしれません」と語っていた。
ここ数年、リーはさまざまなビエンナーレや展覧会に参加してきた。最近では、2022年のヴェネチア・ビエンナーレで背の高い足場に内臓が垂れ下がったようなインスタレーションを発表し、2023年には、ニューヨークのニューミュージアムで、主観的恐怖(アブジェクション)という概念を用いたことで知られるフランスの文学理論家、ジュリア・クリステヴァの1987年の著書『Black Sun-憂鬱とメランコリアについての研究-』にちなんだ展覧会を開催した。
テート・モダンは2000年の開館以来、民間企業による資金提供のもと(2000年から2012年まではユニリーバがパートナーを務めた)世界的に高い評価を得るアーティストの作品をエントランスのタービン・ホールで展示するコミッションを毎年続けてきた。第1回のルイーズ・ブルジョワ、2002年のアニッシュ・カプーア、2005年のブルース・ナウマンなど、現在は巨匠として知られるアーティストが過去に選ばれており、その巨大空間での意欲的な展示は毎回大きな注目を集めてきた。2015年からは現代自動車(ヒョンデ)を新たなパートナーに迎えている(2025年まで)。2024年に選ばれたリーの作品は10月8日から一般公開されるが、アートフェア「フリーズ・ロンドン」(10月9日から13日まで)の開催時期とも重なるため、これまでに以上に多くのアートファンで賑わうだろう。どんな作品が発表されるかはまだ公表されていないが、もし彼女の過去作と同じものであれば、恐怖と畏怖を等しく刺激することだろう。
テート・モダンのディレクター、カリン・ヒンズボは今回のコミッションについて、声明で次のように語った。
「ミレ・リーは、今日最も魅力的で独創的な現代アーティストの一人であり、彼女がここテート・モダンでイギリス初となる作品制作が行えることを嬉しく思います。リーの彫刻には力強さを感じます。彼女の破壊的で多感覚的なフォルムによって、象徴的なタービンホールがどのように変貌するのか楽しみにしています」(翻訳:編集部)
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