メトロポリタン美術館のステンドグラスは盗品!? フランスの団体がアメリカの美術館3館を提訴
フランスのルーアン大聖堂から19世紀後半から20世紀前半にかけて、6枚のステンドグラスが盗まれた。この事件に関与しているとして、2023年12月、パリの民間団体「Lumière sur le patrimoine」協会が、メトロポリタン美術館を含むアメリカの美術館3館を提訴した。Ouest-Franceが報じた。
ルーアン大聖堂では、かつて身廊(礼拝堂入口から祭壇にかけての部分)に飾られていた、「7人の眠り聖人」(*1)を描いたステンドグラスを保存していた。考古学者で美術史家のジャン・ラフォン(1888-1975)は、1911年に一連のステンドグラスを調査して目録を作成したが、その後1931年に古代の宗教美術展を開催するために再びそのステンドグラスを取り出そうとしたところ、空箱だけが見つかったという。6つのステンドグラスのうち5つは、この時点ですでにパリの美術品市場に流通していたと言われている。
*1 7人のキリスト教の聖人が迫害に遭ったため、神が彼らをエフェソス近郊の洞窟で眠らせ、約200年後に目を覚ましたという有名な伝説
これらのステンドグラスはアメリカ人コレクターの手に渡り、彼の死後、ニューヨークのメトロポリタン美術館、ぺンシルベニア州ブリンアティンのグレンケアン美術館、マサチューセッツ州のウースター美術館に遺贈された。
ステンドグラスをフランスに取り戻すべく、パリの民間団体「Lumière sur le patrimoine」協会は2023年9月にアメリカの美術館3館を提訴。同協会のフィリップ・マチコート会長は、「大聖堂は国家の所有物であり、これらの芸術作品は不可分のもの。疑う余地はありません」とコメントしている。
マチコートがフランスで盗まれた美術品を取り戻そうと試みたのは、これが初めてではない。彼は2023年にも、1862年にパリのノートルダム大聖堂から盗まれたステンドグラス2枚を売却したとされるサザビーズの責任を追及したが、パリ検察庁はその訴えを認めなかった。ルーアン大聖堂のステンドグラスの件について、ルーアン検察庁は2カ月後に判断を下すと見られる。(翻訳:編集部)
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