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  • 2024.02.27

500年前の「比類なき」聖画像をガーンジー島で発見。ブリューゲルの師によるサイン入り

イギリス海峡に位置するガーンジー島で、フランドルの巨匠ピーテル・クック・ファン・アエルスト(1502-1550)の工房で描かれた500年前のトリプティク(三枚一組の聖画像)が島民のコレクションから見つかった。来月、イギリスでオークションにかけられる。

ピーテル・クック・ファン・アエルスト工房作のトリプティク。約97×30cm。Photo: Courtesy Martel Maides Auctions

ガーンジー島では、島民のコレクションからコンスタブルの油彩が40年ぶりに発見され、2023年にオークションで20万ポンド(約4000万円)で落札されて以来、美術品の鑑定熱が高まっている。

今回見つかったトリプティクには、イエス誕生時に東方三博士が来訪し、神の子として礼拝した有名な場面が描かれており、右翼にはイエスの養父である聖ヨセフ、左翼に博士の一人、バルタザールが描かれている。

イギリスのオークション会社、マーテル・メイド・オークションズの絵画専門家ジョナサン・ヴォークはBBCのインタビューで、今回の発見について、「ピーテル・コーケ・ファン・アエルストのサイン入り絵画は現存せず、記録もほとんど残っていないため、非常に稀で、他に類を見ないものでした」と語った。

この絵画を手掛けたピーテル・クック・ファン・アエルストは1502年にベルギー・ブリュッセルに生まれ、1527年にはアントワープで聖ルカの組合の親方となった。彼は大勢の助手を抱える大規模な工房を運営し、アントワープ大聖堂のステンドグラスのデザインなど、多くの依頼を受けた。また、宮廷画家、彫刻家、建築家、デザイナー、翻訳家など多方面で才能を発揮。巨匠ピーテル・ブリューゲルの師としても知られている。

このトリプティクが、アエルスト本人が手掛けたのか、助手たちによって制作されたのか、あるいはその両方なのかは分かっていない。それについてヴォークは、「彼が手掛けたとされる他の作品に酷似しています」と指摘。その理由について 、「伝統的にトリプティクの両翼には主題と関係のない人物やモチーフが描かれてきましたが、アエルストはあえてそれを踏襲していません。この新しいアプローチは、シンメトリーと広がりを感じさせるもので、次世代のアーティストたちにも採用されています」と説明した

トリプティクは、3月7日に開催されるマーテル・メイド・オークションに出品され、落札額は15万ポンドから20万ポンド(約2864万円から4000万円)と予想されている。フランドルの巨匠ピーター・ポール・ルーベンス工房のものとされる17世紀初期の素描4点も同時に出品される。(翻訳:編集部)

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