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青銅器時代の「消えた」墓所跡をアイルランドで発見。貴族女性のスケッチが手がかりに

アイルランド南西部・ケリー州の大西洋に面した半島の海沿いで、青銅器時代の墳墓の遺構が見つかった。約4000年前に建造され、19世紀に忽然と姿を消したこの墓所は、破壊されたともの考えられていた。

アイルランド南西部のディングル半島にあるバリーフェリター村からの眺望(2016年撮影)。Photo: Paulo Nunes Dos Santos/AFP via Getty Images

墳墓の遺構が発見された場所は、ディングル半島にあるバリーフェリター村のはずれにある丘の上で、ゲール語の1つであるアイルランド語でAltóir na Gréine(太陽の祭壇)と呼ばれている。

1838年にイギリス人貴族のジョージアナ・チャタートン夫人がこの遺跡のスケッチを残したが、その14年後にここを訪れた古美術研究家のリチャード・ヒッチコックの報告によると、祭壇は壊されてどこかに移動された後だったという。

近頃、考古学マッピングプロジェクトの一環として、民俗学者のビリー・マグ・フリンがこの場所を撮影。ビデオの3Dスキャン変換中、下草の中にある石がヴィクトリア朝時代にチャタートン夫人の描いたスケッチに似ていることに気づいた。

首都ダブリンの国家記念物管理部局に資料が送られたのち、考古学者のカイミン・オブライエンの分析によって、この石が紀元前2500年から紀元前2000年の青銅器時代初期のくさび形墳墓のものであることが確認された。青銅器時代のくさび形墳墓では、儀式や遺体の埋葬が行われていた。

英ガーディアン紙が伝えるところによると、冠石や数基の直立する大きな石など、元の墳墓の約4分の1が残されている。アイルランドの国家記念物データベースには、こうしたくさび形墳墓が多数登録されているが、新たに発見されたこの遺構もその仲間入りをすることになる。

しかし、なぜこの墓が解体されてしまったのか、理由は謎のままだ。(翻訳:石井佳子)

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