謎に満ちたクリムト「最後の傑作」が100年ぶりに公開! オークションの予想落札額は約80億円
100年前に行方不明になっていたグスタフ・クリムト(1862-1918)の肖像画が、2024年4月24日、ウィーンのオークションハウス、イム・キンスキーに出品されることが明らかになった。予想落札額の最高値は5400万ドル(約80億円)だという。
オークションハウスのイム・キンスキーに出品されるのは、グスタフ・クリムト最晩年の1917年に制作された《リーザー嬢の肖像》。出品者は、オーストリアのリーザー家の法定相続人だ。
リーザー家はウィーンの上流階級に属し、クリムトのパトロンとして知られていた。2007年と2012年に制作されたクリムトの作品図録によると、この肖像画のモデルは、当時18歳だった実業家アドルフ・リーザーの娘マルガレーテ・コンスタンツ・リーザー(1899-1965)。しかし、イム・キンスキーが行った新たな調査によると、リーザー家のヘンリエッテ・アマリー・リーザー=ランダウとユストゥス・リーザーの長女、ヘレーネ・リーザー(1898-1962)か、その次女アニー・リーザー(1901-1972)の可能性が高いという。
クリムトがこの肖像画を描き始めたのは、脳卒中で亡くなる前年の1917年だった。死後、未完成の部分が残った状態でリーザー家に渡った本作だったが、1925年以降の歴史はほとんど謎に包まれている。イム・キンスキーによれば、1960年代にリーザー家の法定相続人が取得し、その後3代にわたって受け継がれてきたものだという。
イム・キンスキーのウェブサイトに掲載されたステートメントでは、「この肖像画は、クリムト最晩年の創作に特徴的な鮮やかな色彩を特徴としており、この時期の作品の中でも最も美しい作品のひとつです。これまで専門家の間でもモノクロ写真でしか確認出来ませんでしたが、今回、初めてこの鮮やかな色彩が明らかになります。これほどの希少性、芸術的意義、価値を持つ絵画は、中欧の美術市場では過去何十年も出てきませんでした」と作品の素晴らしさを称えている。
《リーザー嬢の肖像》は、オークション前に、スイス、ドイツ、イギリス、香港で巡回展示する予定だ。(翻訳:編集部)
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